〈6〉

2/7
81人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
「…っはぁ」 ハジメさんの唇が離れると、ザアッと雨の音が蘇った。 やっと空気を取り込める状態になったのに、息をよく吸えない、ハジメさんが続けざまに啄むキスをする。 「んっ…ん…ン」 私の喉の奥から絞り出すような声に重なって、リップ音が軽快に鳴る。 唇から鼻、眉間、こめかみ、額、耳たぶにまで、熱い吐息を残していく… 「…コワクナイ…?」 また唇に戻って、くっつけたままそう言われた。 雷なんかとっくに飛んでった。 「ハイ…」 と言ったと同時に、ハジメさんの熱い舌が入り込んできた。 頬に当てていた手がうなじに差し込まれて、より固定された。 夕飯前の未遂を塗り替えるみたいに、深く、深く、私の口内を掻き乱す。 並んで座っていたはずの私達、いつの間にかハジメさんが上から覆い被さって、私はソファーの背もたれへ押し倒されていた。 激しく打ち付ける雨音と、まだ電気は復旧しない、ランタンに僅かに照らされた空間の中で、私とハジメさんの乱れた呼吸が重なった。 「…ホノちゃん…」 「…ハイ…」 ハジメさんの指が私の指の間にするりと入り込んで、ギュッと握られた。 「………」 「…エ?…ハジメさん…?」 ハジメさんが黙り込むので、不安になる。 「…コワクナイ…?」 同じ質問。 でもさっきと違うのは、ハジメさんがとても切なそうで、掠れ声で言う事。 「…雷、もう行っちゃったから…ダイジョウブ…」 「それじゃなくて… …俺」 「…エ?ハジメさん?を?私が?」 「…ウン…」 ハジメさんが一度深く息を吐いて、続ける。 「…あのね… ホノちゃんが上から降りてきて… 俺に抱きついたでしょ…? そこから…もう…もうさ… …タガが…外れて… …好き過ぎる… …ねぇ…許して…?」 「…ナニ…を…?」 ハジメさんが言おうとしているコト、わかる、なんとなく、私がして欲しいコトと同じ。 でも、確かな言葉が欲しくて、敢えて聞く。 「キミに 触れたい メチャクチャに …シタイ」 …
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!