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大学からハジメさんのお店に向かう途中の電車の中で、今朝の事を思い返す。
お母さん、反対なのかな。
「その話、帰ってからまた話すでいい?」
出勤の時間が迫っていたので、お母さんは早口でそう言って出掛けた。
剣道の朝練が無いので、いつもよりゆっくり、リビングのソファでボーッとして、
【それでは皆さん、今日もいい一日を。いってらっしゃい】
というラジオの締めくくりを聴いてから、私も家を出た。
ブルッとひとつスマホが震えて、開くとお母さんからのメッセージ。
【今帰ったよ。あまり遅くならないようにね。カレによろしく】
【わかった。帰る時連絡する】
お母さんに送信する。はあ、と溜め息が出た。
お母さんを心配させたくない。でも、ハジメさんと長くいられたら、幸せだろうな。
ふたり、なんて言わなきゃよかったのかな。みんなで行くってウソを…いや、お母さんにウソはつけない。
どうしよう。どうしたらいい?
考え込んでいたら、あっという間にお店に着いた。
「えっホノちゃん?」
引き戸を開けると、ハジメさんがビックリした顔でカウンターから私を見た。
そうだ、今から行くって連絡を入れるのを忘れてた。
「あ…ごめんなさい。突然来ちゃって…」
「全然。嬉しいに決まってるでしょ」
そう言ってハジメさんはこっちにやって来て、私の手をそっと引いてカウンター席に座らせた。
「昨日の話の続き、していい?」
ハジメさんがスマホでとあるHPを開きながら、週末の事を説明してくれる。
郊外にある山のキャンプ施設。ハジメさんの親戚の子が学校の行事で行って、とても良い所だと教えてくれたそう。
道具食材一式はもちろん、貸しテントも貸しバンガローもあるから、手ぶらで行けるんだって。
宿泊の予約ページを開いて、ほら週末、まだ宿泊の空きがある、でもまだ予約入れてないんだ。
「ホノちゃん。
本当に一泊…大丈夫?
キミのお母さんの承諾が欲しい。
ダメなら…日帰りにしような」
ハジメさんは私の指先を握りながらそう言った。
…
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