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「日本のずっと南の方にね、フィリピンという国があるの。7000個もの小さな島で一つの国が作られているのよ。ずっと昔私がまだ子どもだった頃。私はもうこの見世物小屋にいたんだけどね。ああ、私ね親に売られてここに来たの……」
「そうまだ私が子どもだった頃ね。フィリピンの若い女の人がこの小屋にどこからか流れてきたの。ああ流れてきたって言っても川や海からの事じゃないのよ。分かるかな?」
「女の人はここでは珍しいから私はそのフィリピン人に懐いちゃって、その人も妹か娘のように私の事可愛がってくれてね」
「その人がいつも私の一本多い指を撫でながら、片言の日本語でいうのよ」
「フィリピン、指いっぽんおおいひと、とてもラッキーなひと……って」
「フィリピンの人は優しいのね。指が一本多くたって仲間はずれにしないのよ」
「逆に幸運な人だって言って大事にしたの……どう思う?」
「暫らくすると何処かに又流れて言っちゃったけど……」
「見世物小屋で指が一本多いですなんて舞台に立ってお披露目しても、ちょっと地味すぎるよね。奥の客席からなんて見えやしない」
「だから仕方なく蛇女になったのよ……」
多分、私があまりにも子どもで何も分からないとでも思っての独り言のようなものだったのでしょう。
「ふふ、可哀想でしょ?」と蛇女は話を締めくくりました。
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