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それは蛇女の死でした。
その事は翌日お姉さんが教えてくれました。実に残酷な事故が起きたのです。事故は例の鼻に蛇を入れるというあれの時でございます。あの忌々しい白蛇が何時ものように鼻から進入した後、何を間違ったのか口の方ではなく気道に進んで行ったのでございます。
蛇女の名前が○○小夜子だとその日初めて知りました。
蛇女の小夜子さんは呻き声も出せずにもんどり打って、もがき苦しみながら舞台の上でバタバタと死んで行ったのです。本当に悲劇です。図らずも自分の死さえも多くの人の見世物になってしまったのでございます。私はショックで声も出ませんでした。
何処かの国では「泣き女」なる者が死者を弔うために葬儀に雇われると聞きました。死者の為の涙が多いほど供養になると考えられているのでございます。勿論、幼い私にそういった知識はありませんでしたが何故か私は小夜子さんの為にたくさんの涙を流さなければという思いに自然と至りました。
私はおいおいと泣きました。両親の前でもお構いなく声を上げて泣きました。食事も摂らずに泣いたのです。母親はお姉さんに電話をかけて事情を知ると私を抱きしめて一緒に泣いてくれました。
少しは小夜子さんの供養になったでしょうか。
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