赤いテントと蛇女

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 ある夏の日、母親と市場に行きますと一枚のポスターが目に入りました。  それは”赤テント興業団”という見世物小屋のポスターでした。ポスターには顎まで鱗に覆われた女の姿が(えが)かれていました。それは正に「蛇女」でございました。 「お母ちゃん」 「何?」 「あれ」私はポスターを指差しました。 「何だか怖そうねえ」 「ぼく見てみたいなあ」 「ええっ」  夜、便所にも一人で行けない弱虫が何言ってるの、という顔で母親は取り合おうとせず、黙って私の手を引っぱりました。私はそれでも、あの毒々しい鱗に(おお)われた蛇女を一目見てみたいと強く思ったのです。
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