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一週間も経つと市場の辺りが俄然賑やかになって来ました。”赤テント興業団”がやって来たのです。
市場の広場に大きな赤いテントが張られました。モノクロ写真のような市場の景色の中に、デンと構えて立った赤いテントはどこか異なる世界から来たもののようでした。蛇女の大きな看板も立っています。私はテントの近くに走り寄り開場日をしっかりと確認致しました。
開場はその日の夜でした。それは生涯忘れられない二週間の始まりでした。
私はその夜、父親に纏わりついて見世物小屋に行きたいと直訴いたしました。すると父親は意外に乗り気の様子でニンマリと笑いました。母親は夕飯の支度をしながら指切りする私と父親を呆れて見ておりました。
二三日経つと一足先に見世物小屋に行った同級生もいましたが、私は極力情報を耳に入れないように努めました。
そうこうしている内に、いよいよ父親との約束の日が来ました。夢にまで見た蛇女との対面の日が来たのであります。
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