赤いテントと蛇女

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 勿体つけるようですが、ここで少し蛇女に私が固執したもう一つの訳を語らせて頂きます。  実を言いますと、”赤テント興業団”のポスターが初めての蛇女との出会いではなかったのでございます。蛇女はすでに少女向けの漫画本の中にいました。  私はその頃ちょくちょく近所のお宅に遊びに寄らせて頂いていました。母親に連れられてお邪魔すると、そこの中学生のお姉さんが母親のお喋りの間私の相手をしてくれていたのです。  お姉さんはケラケラ笑い転げる明るい人でしたが、たまに恐怖漫画を私に見せては怖がらせるという事を楽しんでいました。私の怯えた顔がよっぽど面白かったのだと思います。お姉さんは蛇女の絵を見て引きつる私の顔を覗き込んでは、手を叩いて笑っておりました。  それは本当に怖い絵でした。口は耳まで裂けて血走った目がかーっと見開いて、今にも本の中から這い出てきそうな恐ろしい姿だったのです。私は夜中一人で便所に行く事も出来ないほど蛇女を恐れたにも関わらず恐怖と同じ程度の振り幅で、魅了されて行ったのでございます。
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