赤いテントと蛇女

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 遠慮がちに鳴る拍手の中、舞台の裾から黒子の男がするすると女に近づいて何かを手渡したました。  蛇女の二幕目の始まりです。  女は黒子に渡されたものを両手で包むように持っておりました。すると丸めた手の中から何か小さな鳴き声が聞こえてきます。水を打ったように静まり返ったテントの中に「ピヨピヨ、ピヨピヨ」と忙しない”ひよ子”の鳴き声が響いたのです。客は今度は何が起こるのかと又もや固唾(かたず)を呑みました。  そこに突然、何処からともなくドラムの音が小さく聞こえ、少しずつ大きくなって会場全体に響いてきました。何かを期待させるような(あお)るようなドラムの音でした。 『蛇女頑張って……』  何故か私は女の今からやる事が分かってしまい、女がそれを少し躊躇(ためら)っているように見えました。私は二幕目の蛇女のパフォーマンスが無事に終わる事を祈りました。
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