赤いテントと蛇女

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 それはもう夢のようでした。目の先十メートルも無い所に赤い襦袢の蛇女がカラフルなパラソルの下でビーチチェアに(もた)れて(くつろ)いでいるではありませんか。顔はよく見えませんでしたが足を組んで煙草をくゆらせているようでした。  私は赤い襦袢の裾から覗く白い足に目が釘付けになりました。時々頬をつねってみたりしました。夢に違いないと思ったからです。私は即席の庭にあつらえられたように生える木の蔭に隠れて蛇女を覗き見しておりました。  そもそも私が何故ここに居られるかと言いますと、”赤テント興業団”の団長の娘さんがお姉さんのクラスに少しの間ですが転入して来たのでございます。  お姉さんはいつもの人なつっこさで娘とすんなり友達になったのです。今も私をほっぽらかしてその娘と何やらごちょごちょと乙女話に花を咲かせております。  赤テントの裏手は即席の庭のようになっておりました。グルッとシートで(おお)われて外からは見えないようになっています。庭の隅っこにはピエロが使う玉やジャグリングのスティックなどが無造作に重ねてありました。  大きめの動物のケージも見えました。何か猛獣でも飼われていたのでしょうか。蛇女に食われる予定の哀れなひよ子もどこかに飼われている事でしょう。そうこう思いを巡らせていると、蛇女が(おもむ)ろに立ち上がったのです。私は何故か慌てて口を手で(おお)いました。  蛇女はパラソルから少し前に出ると、なんと私に話しかけたのです。 「そこは暑いからこっちにおいで」  そう言って私に向かって手招きしたのでございます。  
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