赤いルージュの唇に!・・・0秒前・・・

1/1
前へ
/7ページ
次へ

赤いルージュの唇に!・・・0秒前・・・

携帯に連絡が何件か入っていた。 全て愛菜さんからだった。 会いたいです。 連絡ください。 あのベンチで待ってます。 何件も何件も同じ内容だった。 僕は全力で最寄駅のベンチまで走った。 夕日で建物のガラスが反射しキラキラと輝く。 夏特有の生暖かい風が僕の背中を押すように吹き、 帰宅部の僕は、 もやし体質の僕は、 キミが好きで仕方のない僕は、 ひたすら足を動かし走り続けた。 もうこんな時間だからきっと待ってはいないだろう。 だけど、 なぜだか彼女がいるような気がした。 息を切らしベンチへ近づくと、彼女と彼女の隣に男性が立っていた。 「真咲君、大丈夫?」 そう言い、これ飲む?と彼女が差し出したのはスポーツドリンクだった。 蓋を開け、あの日のように差し出したものを受け取ると半分くらいまで飲み干した。 「愛菜さん・・・僕・・・僕・・・愛菜さんが男でもすきですっ!!」 今度は、はっきりと愛菜さんの目を見て噛まずに伝えられた。 次の瞬間、愛菜さんの横にいた男性がお腹を抱え笑い始めた。 「ちょっと・・・お兄ちゃん、うるさいっ・・・」 「え・・・っと・・・」 せっかくの告白を邪魔されたことに戸惑いつつも、愛菜さんが発したお兄ちゃんの言葉に驚きが隠せなかった。 愛菜さんがもし男だったらきっとこうなるだろう。 とにかく愛菜さんとそっくりだったのだ。 「愛菜、悪かったって!なぁ、許して?」 「お兄ちゃんなんて知らないっ!!早く真咲君に謝ってよ!」 愛菜さんのお兄さんに会ったこともないのに、なぜ僕に謝るのか話が分からず二人の様子を見ていると、 「ごめんな、真咲君。愛菜を狙うやつが多くて遊び目的か試させてもらってたんや。告白した日、実は俺が愛菜に女装して会いに行ってた・・・」 告白・・・女装・・・? 「え・・・っと、じゃあ・・・愛菜さんは女性なんですよね・・・?」 「そう!立派な女性。ほんまにすまんかったな。ってことで、お兄ちゃん謝ったからな!あとは二人で話し合いたまえ!!」 愛菜のお兄さんは、ささっと改札口へ向かい帰っていった。 「真咲君・・・ほんとにごめんなさい。お兄ちゃんが勝手なことして・・・」 頭を下げ何度も謝る愛菜。 そんな愛菜に真咲は、 「・・・あの日は本当に苦しかったけど、わかったんだ」 自分自身の胸に手を当て意を決したように愛菜を見つめる。 「愛菜さんが好きです。僕と付き合ってくださいっ!」 何度目かの告白。 愛菜さんは目に涙を浮かべながら、 「私も好きですっ!!」と答えた。 そして二人は近づき、唇を重ねた。 真っ赤なルージュが僕の唇にほんのり赤みを残した。 真っ赤なルージュは彼女の色。 彼女の色に染まった僕はもう彼女のものなのだと実感したのだった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加