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温かい息が口の中に入り、唇が触れ合う。
頬に添えられていた智の手が離れて、代わりにギュウと抱き締められた。
間に挟まれたギターの硬さを感じるのは、それだけ体が密着しているせいだった。莉子の後ろ頭を押さえた智の右手が、愛おしげに髪を撫でる。
智の熱い想いが伝わってくるキスに頭がふわふわした莉子は、わずかに離れた唇が寂しくて眉尻を下げた。
その頬にぽたりと水滴が落ちるのを感じる。
「……智?」
「ごめ……なんか、感極まっちゃって」
笑った智の声は震えていた。
「莉子に、嫌われたと思ってた」
顔を逸らし、手の甲を目元に当てた智。口元は照れ臭そうに笑っていた。
莉子は彼の肩に手を当てて、智がこちらを見ていない隙に、もう一度口の端にそっとキスした。
驚いてビクッと震えた智は、真っ赤になって莉子を見た。
「今まで、自分のことしか、考えてなかった。なんで好かれてるのか分かんなかったし……近づいたら、嫌われるのが怖くて……。自分のことでいっぱいいっぱいで、智の気持ち、考えてあげなかった……」
莉子はゆっくりと智から離れ、その胸に両手の平を当てた。
「ごめんね」
そして真っ直ぐに智を見つめた。
「……好き」
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