プロローグ

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プロローグ

「こっちとこっち、どっちが美味しそうに見える?」 二人きりの、静かで蒸し暑い教室。校内に植えられた木で鳴き続けるアブラゼミの声が響く。 夕方の赤い日に照らされた(とも)はスマホで出した画像を見せてきた。莉子は訝しげな視線で彼を見つめた。 天然パーマの伸びた、智の薄茶色の髪が(まばゆ)い。彼が見せたのはトマトの写真だった。 「こっち」 莉子は躊躇うことなく、右側の写真を指差した。
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