Silver haired girl

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 出生率が管理・維持されるインブリアムでは、一定数生まれてくる子供たちに受けさせる教育にもキャスティングが入る。そんな中、追加の特別実習が必要と判断された者が集められる場所。それがエムデバが通う〈エスコー〉の概要だ。通信制の遠隔教育が主流である昨今、エスコーに呼びつけられる輩はつまりいわゆる、落ちこぼれ、という訳だ。 「…デバ、エムデバ!エムデバ・サハラ!」 「ん…っ、はっ、はいっ!」 「さぞかし良い夢だったようですね。そんなによだれを垂らして」  どっ、と教室に15名いる少年少女たちが一気に湧いた。どの顔もひと癖もふた癖もありそうな奇抜なオーラを持っている。この中に居ると自分が酷く色あせて見える気がして、エムデバは居心地の悪さを常に感じていた。  ハイヒールをカツカツと鳴らし最後列まで進み出たミス・ミサは、ワンレングスの髪を耳にかけながらエムデバの机を覗き込み、進捗状況を見定めた。 「エム…ここはあなたの最後の砦なのですよ。おわかり?」  鼻先をかすめるくらいの距離でミス・ミサが人差し指をチラつかせる。彼女の年齢は不詳だが、そのヒステリックに上ずる声質とヒールを履いても締まって見えない足首のラインからしておそらく、本人が思っている程若くはない。パステルピンクのスーツが一層痛々しさを助長する。エムデバは彼女の言わんとしている事を先回りして、スラスラと原稿を読み上げるように答えた。 「わかってます。平気です。俺は将来は学者か研究者になるって決めているので」 「それはブレインズが定める所であって、あなたの一存では何も決まりません」 「…ですね。そうでした。ミス・ミサ、授業の続きをどうぞ。みんなが待っています」  ミス・ミサは眉間に指を這わせ眼鏡型端末のズレを直すと、エムデバを一瞥し踵を返した。
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