赤いショートショート:かお

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『赤い顔』  梅雨に入って間もなく……   東京・中野に住むコウジはある夜、夢の中で、奇妙な悪魔と戦い、勝った。  ――ので、その悪魔から奇妙な特殊能力を(もら)った。  その能力とは……死ぬ人間が識別できるというものだった。 「しかし……そんな特殊能力を持ったって……な……」  翌朝、コウジは出勤のための食事として、トーストにマーガリンをトッピングし、コーヒーを飲みながら、つぶやいた。  まもなくマンションを後にしたコウジは、都心のJR駅で電車を待っていた。  ホームは、いつものように乗客で溢れかえっていた。  オマケに、少々遅れている感じでもあった。 「えっと……その特殊能力って、どうだったっけ……? あっ、そうそう。顔が赤く見えたら、死ぬ直前……か」  その時、電車が到着し、コウジも後ろから押されるようになったので、振り向いた時、近くの鏡に彼の顔が映った。 「えっ。オレの顔、赤い……」  そのままコウジは車内に押し込まれた。  ふと見ると、周りの人々の顔が全て、赤かった。 「えっ、なんで……? まさか……」  電車が駅を出ると、まもなくカーブに入る。  そのカーブの向こうには、オープンまじかの巨大なデパートがあった。  コウジは悪い予感を覚え、運転席へ向かった。  電車のスピードは、何故か加速していた。  その間にいた乗客、全ての顔が赤かった。  運転手の顔も赤く、パニック状態だった。  スピードを上げ続ける電車の車輪が、レールから外れて浮き上がった。  その状況に、全ての乗客もパニックで、車内は大騒ぎとなった。  コウジは真っ赤な顔の乗客達に、もみくちゃにされながら、 「これって、あの夢でオレに負けた悪魔のイタズラなのか?」  すると傍で倒れている乗客が、 「おい! どうなってるんだー!」 「キミ、その悪魔って何だ!」 「誰か助けてくれー!」  電車は、レールから大きく外れると、丸でSF映画のように空中へと向かった。 「おい、やめろー!」 「(たの)む、やめてくれー!」  電車は、南へと飛行をつづけ――  何人かの乗客が必死でドアを開けようとする中、東京湾に突っ込んでいった。 「うわー!!」 「キャー!!」  ――終――
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