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事件展開2
俺は豪華な邸のリビングで、レモンティーを飲んでいたが、その後、状況は何も変らなかった。
サイ顔のデカ長も、やれやれといった顔をして、カウチに凭れ切っていたが、状況が状況だけに、重苦しい空気は変わらなかった。
胸元の開いたドレス風ワンピースを着た夫人も、沈痛の表情だったが、何しろ犯人からの連絡がないのだから、何の施しようもなかった。
キリッとした夫人の美顔は曇ったままだ。
その割に、夫人の身体のラインだけは目一杯張り切っており、胸の切れ込みが大きく開いたワンピースの胸元から見える光景は、俺を安らがせた。
くびれたウエストから、大きく悩ましいラインを描いて盛り上がっているヒップや、大きくスリットの入ったワンピースから覗くハッとするほど見事な美脚が眩しい。
サイ顔のデカ長も、他の刑事や警官たちも、たまに夫人をチラ見してはいるが、決して正面から見つめることを警戒してやらなかったし、そもそも夫人と目も合わせなかった。
途中、可愛らしい顔をした美少女と言っていいほどの少女がやって来たが、なんでも地方から東京へやって来た夫人の姪だそうで、この緊急事態ではあるが、かなり前から、こちらを訪れる約束があったらしく、夫人は姪を受け入れ、客間に住まわせているとの事だった。
夫人とお揃いの鈴付きのブレスレットをしている華奢な感じの少女で、夫人とは随分仲が良いらしく、しばらくして一緒に、客間の方へ二人で消えていった。
ちょっとしてから、夫人は戻ってきたが、辛い気持ちはさすがに隠せず、暗い顔のまま、その美しくノーブルな顔に影を落としていた。
少女には誘拐事件の事は伝えていないとのことで、刑事達についても、この近所で事件があったので、その聞き込みに来ているだけだ、と少女には伝えてあるらしい。
レモンティーを飲み干すと、俺は他の仕事の用事があると告げて、外に出た。
重苦しい空気に、これ以上耐えられそうになかったからだが、途中タクシーを拾うと、すぐに王子駅まで行ってもらった。
王子駅に着くと、コインロッカーのある場所まで歩き、ポケットから鍵を取り出して、コインロッカーを開けた。
そして中のものを取り出して、駅から離れ、まだ残っている、数少なくなった公衆電話の方に向かった。
ちょっとした作業をする必要があったが、まぁ探偵なんてものをやっていると、こうした作業にも慣れてくるものだ。
手際よく作業を済ませると、俺は非通知で電話をかけた。
仕事の手順は心得ている。
「もしもし」
相手が出た。
こちらも話す。
「金は出来たか?かなりの猶予を与えたはずだが」
「今、主人が金策に走り回っているんです。もう少し待って下さい」
タクシーで王子駅へ向かう途中、旦那のベンツとすれ違っていた。
もう家に到着しているはずだ。
「旦那を出せよ。家にいるんじゃないのか?嘘をついたり、ごまかしたりしてると、ためにならんぞ」
すぐに夫人が反応した。
「お金は用意できたと連絡がありました!」
「わかった。また連絡する」
俺は1分、いや30秒ほどしか電話をせずに切った。
逆探知は無理だろう。
公衆電話の周りには誰もおらず、俺は速やかにその場所を離れて、駅の方へ歩いた。
コインロッカーのある場所へ戻って、もう一度ボイスチェンジャーをロッカーの中にしまった。
子供は、ある場所で遊ばせてある。
おやつもたっぷり補充しておいたから、泣き出したり、寂しがったりすることもないだろうと思う。
そのまま自宅へ電車で帰ったが、帰宅してから、ある人物と電話で話し、本日は寝た。
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