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高校生になって通う高校は校門の前に車道があり、信号機が設置されていた。私は自転車通学で大抵その赤信号に捕まっていた。夜更かし癖のある私は早朝寝坊することも多く、遅刻ギリギリになってはその信号機を恨んでいた。そこの道路を走る車は少なく、信号無視する人なんかはしょっちゅう見かけた。正直、私も信号無視をすれば遅刻を免れたであろうことは多々あった。それでも私が信号無視をすることはなかった。信号待ちに捕まると、速度そのままに駆けていく同じ制服を着たライダーを横目に意味のない赤信号がどうしてそこにあるのかを考えていた。その道で交通事故があったなんて話を耳にすることはない。それでも目を光らせるその赤信号は何のためなんだろうか。そんなこと考えているうちに車が一台として通ることなく信号機は青へと変わった。
そんな話を近所のおばあちゃんに話してみるとおばあちゃんは優しくこう言ってくれた。
「さきちゃんは偉いね。あそこの道、最近は交通事故なんてぱったり無くなったけど、おばあちゃんが若いころは信号機がなくてね。そんなもんだからあと一歩間違えたら事故だなんて冷や冷やした場面に何度あったことか。だから、さきちゃんが信号機を守っているのは良いことなんだよ。」
そう言われるとほんの少し自分が誇らしく思えた。私は赤色が少し嫌いじゃなくなった。
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