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「大丈夫?随分と飲んだね。それにしても、月が綺麗だね。」
「何ですか告白ですか。松尾芭蕉ですか。私は簡単な女じゃないですから騙されないですよ~。」
ハハっと彼は小さく笑って、月の方へと向き直った。彼の横顔をチラチラと覗き見る。
「今日もその服似合ってるね。」
突然、こっちを向いて話しかけてくる彼に動揺を隠せず咄嗟に言葉を返す。
「いやいやいや、そんなことないです。」
「綺麗だよ。赤がよく映えてる。」
照れ隠しに少し疑問に持っていたことを酔ったふりをして尋ねる。
「それにしても、先輩は赤が好きですね。赤い服を着てるといつも誉めてくれるじゃないですか。昔っから赤が好きなんです?」
「ん~別に昔から赤が好きって訳じゃないんだけどな。さきちゃんは運命って信じる人?」
運命、なんて空虚な言葉を並べられた私は少し苦い顔をして首を傾けてみせた。
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