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あくる日、学校で司は友人である大和萌奈と話していた。
「ねー、司は好きな人とかいないの?」
他愛のない日常会話からいつしか恋ばなへと変わっていく。
「いないよ。萌奈は?いるの?」
「私はいつでも恋してるから!」
「何それ~。どんな人?」
「内緒~。」
二人で話していると、もう一人の友人、高畑花が日直の仕事を終えてやって来た。高校生の賑やかな列が駅へと続いていく。三人もその中へと合流した。
「お待たせ!なになに?何の話してんの?」
「萌奈、好きな人いるんだって!」
「まじで?誰なの?!」
花も興味津々だったが、萌奈は最後まで答えなかった。ここで、萌奈が話題を反らす。
「そういえばこの前、司の家の方の駅で事件なかった?」
「あー・・・あれね、通り魔事件。」
「通り魔?司大丈夫だったの?」
司の表情が強ばる。無事ではあったが、もしものことを考えると恐ろしい。二人に悟られないように、司は笑顔を作った。
「うん、いつもより遅い時間に学校出たからさ。事件があった時間には、駅に着かなかったんだ。」
「そっかー、良かったじゃん!」
「だよね~ほんとにラッキーだった。」
「それって、もしかしてマヨケ様のおかげじゃない?」
萌奈がさらりと言った。司は思わず足を止める。あれが本当にマヨケ様のおかげなら、その効果はすごいものだ。鞄につけているだけで、命が助かったことになる。
「司?どうしたの?」
花と萌奈が声をかける。司は鞄のマヨケ様を右手で握りしめた。
「・・・なんでもないよ。」
それは、明確に司の心を浸食していた。マヨケ様があれば、危険に晒されることはない。ーーー数日後、さらに司がマヨケ様を信じ込むようになる出来事が起こる。
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