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「萌奈となんかあったの?」
翌日、花からメールが届いていた。今までの友情を否定された司は、さらに元気を失っていた。
「私、萌奈に嫌われてるのかな?」
思わず、花へそう返した。誰かに否定して欲しかったのかもしれない。三人で過ごした日々まで、失いたくはなかった。返事はすぐに届いた。
「それはないよ。」
花はそう確信しているようだ。次の文章は司を混乱させた。
「だって、司の誕生日プレゼントにマヨケ様選んだの、萌奈だもん。」
マヨケ様と萌奈がいまいち結び付かない。萌奈が自分を心配しているということだろうか。
「ありがとう、花。ちょっと萌奈に電話してみる。」
萌奈の本心を知りたい。それだけ。ちゃんと、話をしたかった。電話帳から萌奈の名前をタップする。呼び出し音のなる間、手が震えた。もし、拒絶されたらどうすればいいのだろう?
「・・・もしもし。」
司の心配とは裏腹に萌奈は電話に出た。元気がないのは、昨日のことが原因だろうか。
「萌奈、昨日のことなんだけど・・・。」
「ごめん!私、変なこと言ったよね。その、気にしないで大丈夫だから!」
萌奈の言葉が、痛い。空元気な声に司は悲しくなった。
「何かあるなら、話してよ。私だって、萌奈に元気でいて欲しいんだよ?」
「司・・・ありがとう。でも、言えない。ごめん。」
「なんで?なんで話してくれないの?」
隠そうとする萌奈に司は痺れを切らした。
「私のこと信じてない?信用できない?」
「違う、そんなことない!」
「じゃあ話して。」
今までの疲労も相まってか、司はきつい物言いになってしまう。
「・・・・。」
「萌奈!」
「嫌われたくないの!司に・・・。司にだけは!」
司に対して、萌奈も本音をぶつける。
「嫌わないよ!」
「わからないじゃん、そんなの!」
「話してくれなきゃ、わかるわけないでしょ!」
「言ったら司は、きっと私のこと・・・嫌いになる。それは嫌なの!怖いの!」
萌奈の声が震えている。何が怖いのか、司にはわからない。嫌いになんてなるはずないのに。その時、花が言っていたことを思い出した。
「・・・マヨケ様・・・。」
「ーーーっ!」
「花が言ってたの。マヨケ様を誕生日プレゼントに選んだの、萌奈なんでしょ?」
「・・・やめて。」
「ネット上で、マヨケ様の恋のおまじないが書かれてるサイトを見つけたって。」
「やめてってば!」
悲鳴にも似た叫びは、司を黙らせるには十分だった。
「お願いだから、もうやめて。マヨケ様は、関係ないから!」
そこで、電話は切れる。静けさが、司の心を冷たく締め上げる。萌奈と、喧嘩した。
「恋のおまじない。調べたら何かわかるかな?」
調べない方がいい。何か悪いことが起こる。それでも、萌奈の不安が少しでもわかるならーーー司は近くのネットカフェへ向かった。
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