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魔除け様
赤いスカーフを巻いたお地蔵様のキーホルダー、通称マヨケ様が、女子高生を中心に流行っていた。それは、一見ただのお地蔵様だが、鞄や財布などにつけているだけで魔除けになると囁かれている。
「ほんとにこれで魔除けになるの?」
笹山司は半信半疑だった。しかし、友人たちが誕生日プレゼントにと選んでくれたものにケチをつけるも申し訳ない。彼女は鞄へつけてみた。ぶら下がっている姿は少し可愛くみえる。効果はともかく、司はキーホルダーを気に入った。
次の日、学校帰りのこと。学園祭の準備で帰りの遅くなった司は、急いで駅まで向かっていた。もう一つ信号を渡れば駅まではすぐだというところで、信号が赤へ変わる。
(まじか!タイミング最悪!)
不満に思いながら彼女が信号待ちをしていると、母親から電話がかかってきた。
「もしもし、お母さん?どうしたの・・・。」
「あんた、今どこ!?大丈夫なの!?」
電話の向こうの慌てた様子に嫌な汗が背を伝う。何があったのだろうか。
「今、駅の前の交差点だけど・・・。さっき学校出たばっかりだし・・・。」
「そう・・・・多分電車動いてないでしょ。迎えに行くから、できるだけ明るいとこにいなさいね。」
「え、ちょっと・・・・。切れたし・・・。なんなの?」
わけがわからなかったが、とりあえず明るい駅前の辺りまで歩いた。心なしかいつもより人が多い気がする。駅員らしき人物が、バス停まで人々を案内しているのが目についた。
(ほんとに電車動いてないんだ・・・。)
自分だけ何も知らないようで、司の不安は膨らむ一方だった。そこへ、母親の運転する車がやって来る。乗り込むと、車内でテレビがついていた。
「・・・×××駅で起こった通り魔事件について・・・死傷者は・・・・。」
電波が悪いのか所々音声が途切れている。しかし、駅名は聞き取れた。それは地元の最寄り駅だった。
「通り魔って、何それ・・・・。」
「ニュース見てビックリしたわよ。もう、遅くなるならそう言ってよね。」
「あ、うん・・・ちょっと、学祭の準備してて。」
「良かったわねぇ。通り魔事件が起こったの、あんたがいつも帰ってくる時間だったのよ?」
「え・・・。」
司の背筋に悪寒が走る。学園祭の準備がなければきっと、今日もいつも通り帰っていただろう。もしかしたら、自分が被害者になっていたかもしれない。ふと、鞄のマヨケ様に目がいった。
(まさか、マヨケ様のおかげ?)
恐怖と不安からか、司は妙に強くそう考えてしまう。身に付けているだけで、魔除けになる。その言葉が頭の中にこびりついていた。
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