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炎の収穫祭
7年前の10月10日。
この日は秋の収穫祭が広場で行われていた。
秋の実りに感謝するこの行事は、世界各国で開催されており、ここの広場も毎年たくさんの模擬店が立ち並んでいた。
夕方頃、夕日は沈み始め、辺りは街灯に灯りがついていく。
収穫祭の本番である夜に向けて、各模擬店が準備に追われて忙しない。
その模擬店の合間を数人の子供たちが列で歩いていた。
先頭に立つ40代ぐらいの修道女が子供たちを引率しているが、彼女は子供たちの歩幅に合わせようとせず時折怒鳴りながら歩く姿は、修道女の清らかなイメージからはかけ離れていた。
子供たちは一人ひとりチラシを持っており、そこには「神に祈りを」と書かれている。
その列を見た模擬店の店員たちは、表情を曇らせ、呆れてため息をつくが、誰も子供たちに関わろうとはしなかった。
先頭にいる修道女は子供たちのなかで一人だけ手を引いて歩いている。
修道女はその少女を引きずるかのように腕を引っ張られるように歩いていた。
「シスター、痛い、腕、痛いよ。」
「うるさいね、さっさと歩きな。あんたはただでさえグズなんだから。」
そう言われた少女・ルネッタは涙目になりながら後ろに続く子供たちを見たが、子供たちは皆俯いてルネッタを助けようとはしなかった。
「さあ、ここに並んで。みんな愛想よくするんだよ。」
修道女は子供たちを噴水の前に並ばせ、「チラシを配れ」「全部配り終えるまで帰ってくるな」と繰り返し言い聞かせる。
そして何日も洗濯されていない子供たちの服を、はたきながら土埃を軽く落としていく。
ガリガリに痩せた子供たちにとって彼女の叩く力は強すぎて、何人か子供がふらついていた。
「空が赤い。」
子供の一人が空を見上げて言った。
夕暮れ時の空が赤く赤く光を放っていた。
暗くなるはずの辺りはまるで時間を巻き戻すかのように、徐々に明るくなっていく。
その異変に広場にいた全員が気がつきはじめ、空を見上げた。
ルネッタも空を見上げた瞬間、視界が眩しく光り、一瞬にして闇に包まれた。
7年前の10月10日。
その日収穫祭の準備が行われていた広場に、突如無数の炎の塊が降り注いだ。
模擬店の店員も、修道女も、子供たちも、その場にいたものは皆黒く焦げ、真っ黒な炭へと変わり果てた。
多くの犠牲者をだしたこの日は後に炎の収穫祭と呼ばれ、歴史に残る大災害となる。
原因はいまだ解明されていない。
さらに謎を呼ぶのが、たった一人だけ生き残った者がいたことだった。
広場にいた全員が原型をとどめないほどの無残な死を遂げた中で、ルネッタ・リンフォードだけが生き延びていた。
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