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その細い身体を抱き締めてみたいと、心密かに思いながら、高校の三年間は叶わずにいた。
お互いを固く結びつけるものは、結局何ひとつない。生活も大きく変わった。この先、私達は自然と会うことも無くなっていくんだろう。
舞子はきっとそのうち、私のことを忘れる。
私も密かな愛情に蓋をしたまま、舞子を忘れる日が来るような、そんな気がする。
別に、それでもいい。
舞子がいつかふとした瞬間に、「ああ、あんな奴もいたなあ。元気かな?」なんて風に、私の事を思い出してくれたらいい。
その時、私の方は舞子をどう想っているんだろうか。「私のあずかり知らぬ所で、そこそこ幸せになっていて欲しい」なんて、ぼんやりと考えたりするのかも知れない。
別に感動するシーンでもないのに、いつの間にか目の前のスクリーンが涙でぐにゃぐにゃにゆがみ始めていた。
舞子がぐっすり眠っていてくれて助かった。
このまま、退屈な時間がいつまでも続いて欲しい。最高につまらないけれど、私はこの映画を一生忘れないような気がする。
頭の中では全米が泣いていた。
舞子の温もりを感じながら、勝手に一人で盛り上がって、私はスンと鼻をすすっていた。
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