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適度に利いた空調、暗闇、柔らかく体を包み込む椅子。それからスクリーンで静かに繰り広げられる、退屈な青春映画。この状態が3時間近くも続くのだから、眠くなるなと言う方が無理だろう――左肩に重みを感じながら、そう思った。
ちらりと目だけを動かして隣を見る。
舞子は薄く唇を開き、私の肩に頭を預けるようにして静かに寝息を立てている。
冗談めかして「今日は寝ないように頑張る」なんて言っていたのに、本当に眠ってしまうなんて。私は少し呆れながらも、舞子の寝顔を微笑ましく見つめた。
寝たら起こすように、と言われていたことを思い出した。
でも安らかな寝顔を見ていると、無理やり揺さぶり起こす気にはどうしてもなれなかった。
私は一人、スクリーンに目を向けた。
半袖の開襟シャツを着た男の子が海辺を歩いている。その恋人である女の子が、少し離れたところから、じっと男の子の後ろ姿を見つめている。淋しげな横顔が、舞子に似ているような気がした。
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