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高校生の頃の舞子の姿が、ぼんやりと脳裏に浮かんだ。
生意気そうな顔に、細身で小柄なルックスが、ちょっぴり子供っぽく映っていたのをよく覚えている。
最近の舞子は、幼い顔立ちこそ変わらないけれど、少し痩せてシャープなった頬のラインが、ふとした拍子に淋しい落ち着きを含んだ、大人の表情を見せるようになった。
大人に近付く度に、舞子はいっそう魅力的になっていく。
これからもきっと、舞子に好意を持つ男の子は次々に現れるんだろう。
舞子の頭が乗っている部分から、温もりが少しずつ伝わってくる。髪の毛が私の首筋をくすぐって、なんだか妙な心地になった。
いい匂いがする。
シャンプーの匂いなのか、それとも香水の匂いなのか。同じ女なのに、舞子はなぜこんなにもいい匂いを漂わせているんだろう。わからない。
舞子の髪に思い切り頬を押しつけたくなって、少し悩んだけれど、結局やめた。
諦めた後はただひたすら、じっとスクリーンを見つめ続けた。
映画の中の季節は夏。
現実の世界では、人肌の温もりを愛しく感じるような季節が流れている。
舞子の事が好きだった。
凛とした小生意気そうな顔も、几帳面なところも、いい匂いがするところも、いつも一人でフラフラしているところも、退屈な映画の誘いを断らないくせに、つまらないと眠ってしまうような素直なところも。
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