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啓一郎・1
父さんの研究所は、Ωの生活向上の為のものだ。
小さい頃から神童と呼ばれ、大学を卒業する時には大学院に入って研究をして欲しいと泣きつかれたと言っていた。
でも、学生の時には既に母さんと出会って惹かれ合ってすぐに番になったから、母さんの為に出来る事をしたいと卒業と同時に自分で会社を立ち上げた。
立ち上げた会社はすぐに波に乗り、今は程々に名の知れた製薬会社になっている。
母さんの体質がどうしても他のαを引き寄せてしまうものだったので会社とは別に、父さんは個人でΩを守る研究したいとスポンサーを募り自分の研究所を作った。
父さんの友人はそれぞれが大企業のお偉いさんだったり大きい病院の経営者だったりして、皆がその研究の為に快く出資してくれている。
うまくいけばそれが商品化され莫大な利益を生むので大人たちの利害が一致したのだろう。父さんはその期待にきちんと応えた。
その研究のお陰で母さんの体質は父さんの開発したネイプガードと言う商品で抑えられる事が出来る様になった。
通常の咬接防止の効果に加え、Ωのフェロモン過多症の過剰なフェロモンを抑える事迄出来るとあって世の中に大いに受け入れられた。
過多症でなくてもあまりフェロモン抑制剤が合わない人や頼りたくない、薬が苦手な人までもが喜んで購入していた。
ヒートの時には使えないけれど、そろそろだという時期には大活躍の商品で、世の中には自分と同じ症状の人が結構いる事と、フェロモンを抑えたい人が自分以外にも沢山いる事を知った。
この研究所はΩの為のものなので、働いているのはΩとβ、もしくは既に番のいる研究員のαで構成されていた。
研究所のあるエリアでは、αとは家族以外殆どと言っていい程接触がなく、ここへ来てからはαへの恐怖で過ごしていた時とは違い、とても穏やかな生活になった。
この地域の学校には研究所の家族が多く通っていて、先生も生徒もΩとβしかいない。学校への外部からの侵入にはとても厳しく、面会の為の審査会を通った上で、更に先生達の面接が待っている。
そこまで徹底しているので、Ωの多いこの学校は生徒の親達から絶賛されていた。
襲われる恐怖に怯えなくてもいい事がありがたいと思った。
ここでもやっぱり告白されたりはするけれど、『俺の運命』とか、その場限りの見え透いた不埒な目的を持った薄っぺらいものではなく『あなたのこういう所が好きになったので付き合って下さい』という、俺を人として見た上での好意のものだった。
いつもそれには丁寧にお断りさせていただいた。
普通にクラスメイトとも馴染んだ。
使われていない教室だってもう怖い事はない。
本当に穏やかな生活だ。
ただ、それだけ。
一人になると寂しくて、悲しくて。
愛しい人に会えない辛さを噛み締めた。
決めたのは自分なのだから。
逃げたのは俺だから。
きっとたかだか幼なじみの俺なんて、もうただの思い出になっているだろう。もしかしてその思い出すらも薄く消えかかっているかもしれない。それはとても寂しいけれど仕方がない事だ。
今は幸せ?
楽しくやってる?
考えたくはないけれど誰か好きな人は出来た?
俺は、寂しいよ。
だって、何故かまだ俺の項から慎二の痕が消えないんだ。
もう随分と薄くなってしまったけど、しっかりと俺の身体に慎二がいるんだ。
もう二年も経つのに。
触れればいつだって思い出してしまう。
俺が願ったから消えないのかな。
あの時俺は慎二を欲しいと、俺を支配してと。
心の底から思ってしまったから。
まるで番になれた様な慎二の跡。
願いが叶ったと勘違いしてもいいよね。
勝手に俺が思うだけならいいよね。
慎二に迷惑はかけないから。
会わなければ迷惑はかからないから。
「啓、ちょっと痛いぞ」
「平気だよ」
父さんの研究所で俺の腕から悟叔父さんが採血をする。月に一度定期的に。
もう慣れてしまった。
通常時とヒートの時の血を検査して、父さんの研究に使っているそうだ。
ヒートの時の血はその期間、波が治まっている時に父さんに採血してもらう。相手が父さんだからか触られても性的感触ではなくて二度目からは恥ずかしさもなくなった。
俺の血が誰かの助けになる為の研究に使われていると聞いても、ただ採血されているだけだから実感は湧かなかった。
叔父さんは俺が中学校を卒業したと同時に保険医を辞めて研究所に勤めだし、お嫁さんをもらった。
叔父さんのお嫁さんはΩの男性でとても柔らかい、優しい雰囲気のわたあめみたいな人だった。叔父さんは何処でこんな人を見つけたのだろう。
『兄さん義姉さん、啓。俺こいつと結婚するから!』
と、ある日彼を突然連れてきた。
どういう経緯で叔父さんと彼が結婚する事になったのか知りたかったけど、いつも叔父さんは『内緒』と笑うだけだった。
悟にしては素敵な人を選んだな。お前には勿体無いよと、よく父さんが叔父さんをからかっていた。
両親も、叔父さんも幸せだ。その姿を見ると素直に嬉しい。
心からそう思うのに、いつもその片隅でチリチリとした焦燥感に囚われる。
αとΩの幸せの形を見せられて、こうしなければいけないという強迫観念に駆られてしまう。これが正しい幸せの形だと、これ以外は駄目なのだと見せつけられている様で。
でも俺にはそれは絶対出来ない、したくない。
誰もそうしろなんて言わないし、寧ろ自由に生きろと言われるけど。
家族が、身内が幸せであればある程、自分の中の歪な部分が浮き彫りになる気がする。
幸せの中にいる筈なのに。
とても孤独だ。
「終わったぞ、啓」
採血後の跡を叔父さんが止血する。する事もないのでただそれをぼーっと見つめていた。
「叔父さん、俺の血は本当に父さんの研究に役に立ってるの?」
「そりゃ勿論。今も兄さんは新しい抑制剤とかネイプガードの改良の為に役立ててるぞ」
「……そっか」
聞いたところでそれ程興味もない話。どうであれ俺の穏やかな苦しい日常は変わらない。
俯いた俺の顔を叔父さんが覗きこんだ。
「どうした啓?悩みでもあんのか?」
「……悩みなんて、ないよ」
「ふぅん」
悩みじゃない。でも何も聞かれたくない。自分でこの感情を持て余しているだけだ。
「俺、これから友達と遊ぶからもう行くね」
「おう」
俺は逃げるように研究所を後にした。
町中を一人でブラつく。
町には流石に普通にαも歩いてはいるけど、この町にαが入るには誰もが町の入口でGPSを着けなければならない。それが嫌ならば入らなければいいと、なんとも徹底した管理だった。だから他の町からこの町は『Ωの駆け込み寺』なんて呼ばれている。
そのお陰で俺でもここならのんびりと気を張らずに歩ける。
友達と遊ぶなんてした事ない。いつも慎二と一緒だった。
暇な時にわざわざ慎二じゃない誰かと会うなんて想像すら面倒だ。
それならばずっと一人でいい。
「なんか俺、終わってんな……」
小さく呟き自嘲する。
もう何も考えない様にしなければ。これは俺が望んだ事だ。
考えたって辛いだけだ。
ただただここで生きていく。
この穏やかな檻の中で。
叔父さんに友達と遊ぶと言った手前、なんとなく家にも帰れず町を行くあてもなく歩いていると、小さい喫茶店が目に留まった。
昔ながらといったその佇まいに惹かれ、ふらりと入ってみた。
「いらっしゃいませ」
店内には客はおらず、カウンターの中に若い男性が一人いるだけだった。ふんわりと漂う優しいこの香りはきっとΩなんだろう。その香りはお店の雰囲気にとても似合っていた。
「お好きな席へどうぞ」
なんとなく入り口から遠い奥まった席に着く。
誰も邪魔せず、誰にも邪魔されずにひっそりとしていたかった。
「コーヒー下さい」
「はーい」
コーヒーが来る迄、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
外の人達はキラキラしていて楽しそうだ。皆自分で幸せを掴み取ろうと努力しているのだろう。彼等の眩しさに目を細めてしまう。
俺にはそれが眩し過ぎた。
恋人同士だろうか。男性二人が仲睦まじく手を繋いで歩いているのが見えた。お互い笑顔でとても楽しそうだ。
いいな、と思う。
あのまま逃げないでいたらもしかしたら。そんな事を考える。
考えても無意味だとわかっているのに、ふとした時に夢をみてしまう。
でも現実は厳しくて、残酷だ。
俺の体質が変わらない限りそんな未来はあり得ない。常にαに襲われる恐怖に怯えながら生きていく辛さはイヤと言う程味わった。捕まったら最後、逃げる事は敵わない。
本当はずっと慎二と一緒にいたかった。側にいたかった。でもあの時、自分の我が儘で抱いてもらっただけの俺に慎二との未来を歩む事なんて出来る訳がない。慎二には慎二の未来がある。
俺ではない、誰かと。
先のなかった未来を思い小さくため息を吐いた。
両親にも悪い事をしているのはわかってる。
ずっと仲が良かった慎二の両親と離れさせてしまった。仲が良すぎて隣同士の土地を買うまでなのに、俺のせいで両親にも迷惑を掛けている。
俺がいなければ、何度そう思っただろう。
でもそれは両親を悲しませ、更なる迷惑を掛けるだけ。それだけの理由で踏み留まっている。
俺は何の為に生きているんだろう。
俺の時間は止まったままだ。ただ同じ事を何度も考え、その度に現実に打ち拉がれる。自分で決めた事なのに苦しくて、寂しくて、辛い。
ふと手元を見ると、いつの間にかコーヒーと、何故か小さなタオルが置かれていた。
不思議には思ったが余り気にせずにコーヒーを口に運んだ。すると何故かコーヒーの味が少ししょっぱかった。
口元に指を這わすと頬から涙がつたっていた。
……ああ、俺は泣いていたのか。
タオルはきっと涙を拭く為にと置いてくれたのだろう。
気持ちだけ受け取って自分の袖口で拭う。
声を掛けられなかった優しさに感謝した。
「タオル、ありがとうございました……」
「よろしかったらまた来てくださいね」
お店を出る時にタオルのお礼を言うと、お店の人にそう声を掛けられた。仕事として皆に言っているだろう言葉が、今の俺には暖かい優しさとして響いた。
ここでなら、自分の感情に蓋をしなくてもいいのかもしれない。苦しい事、辛い事を素直に思っても許してもらえる様な気がした。
「はい、また……」
「おかえりなさい」
程よく時間も潰す事が出来て家に帰った。少し汗もかいていたので、母さんにすぐ俺のネイプガードを外してもらった。
俺は未だにロックナンバーは知らないままだ。家族と慎二が知っているならばそれで良かった。これから先、外で外す事など一生ないのだから。
服を着替え首の周りの汗を拭き、最後にそっと項に触れて指で慎二の痕をなぞってしまう。もうそれは日常に取り込まれている俺の癖。その痕に触れる度に涙が出そうになる。
もう随分と薄くなっていて、消えるのも時間の問題なのかもしれない。慎二はβだから残っている方が奇跡なのかもしれない。
でも、まだ後少し、お願いだからもう少し。消えないで。俺から慎二を消さないで。
夕食後父さんにリビングに呼ばれた。そこには何故か叔父さんも来ていた。
お嫁さんは来ないの?と、聞いたら今日はお留守番だと答えた。珍しいな、いつも必ず一緒に来るのに。
「啓、ちょっと項見せてくれるか?」
「あ、うん」
父さんと叔父さんが後ろに回り二人で俺の項を見ている。そこには薄くなっているけど確かに慎二の跡がある。その跡に二人が触れた。
「これはやっぱり……」
「ああ、間違いないな」
俺の後ろで何やらぶつぶつと話をしているけれどその内容は声が小さくて聞き取れなかった。
ソファーに座り直した二人は何故か神妙な面持ちだった。
「啓、慎二君の跡が消えないのは何でだと思う?」
「え?」
叔父さんに唐突にされた質問の意味がわからなかった。
「もうあれから二年も経ってる。おかしいと思わないか?」
「……なに?」
これは俺が肌が弱いから消えないだけで、俺が消えないでと毎日願っているから身体が消さない様にしているだけだ。ずっとそう思っていた。
「何度もお前の血液検査をしていたのは研究の為だけじゃない。お前の身体の検査もしていたからなんだ」
「俺の、検査?」
「お前の二回目以降のヒートが普通と違うのはわかる?」
普通と違う?
そんな事言われても……。
初めての時は慎二がいたから苦しまずに済んだ。二回目との違いなんてわからない。ただ、二回目のヒートは慎二が欲しくて欲しくてたまらなかった。
でも、そんな事は叶わないから慎二の跡に触れて、慎二の熱を思い出しながら自慰をして、抑制剤を飲んで何とか乗り越えた。その後もずっとそう。
そんな事、他人と比べた事なんてないから普通と違うと言われてもわからない。
「お前さ、ヒートの時αが欲しいとは思わないだろ?」
「まさか!思う訳ない!!」
俺にとっての家族以外のαは怖い生き物でしかないのに!組み敷かれた時の恐怖は未だに俺を苦しめるのに!そんな恐ろしい事想像だってしたくない。
「それがおかしいんだ」
「え?」
「あのな、Ωという性は例えどんなに嫌だと思っても本能でαを求めてしまうものなんだ」
「……嫌なのに?」
そう、と叔父さんは小さく頷いた。
「感情と本能は別の物だ。Ωの身体がαを受け入れる為の準備をするのがヒートだ。どんなに嫌でもαを求めてしまうのがΩの普通の状態なんだ」
『どんなに嫌でも』
理屈はわかるけど、それはとても酷い呪いの様だ。Ωであるという事は、人によってはとても残酷な運命だ。
何故か、有難い事に俺にはその呪いの様な本能が出ていない。今まで何度かあったヒートの時にはやっぱり慎二以外は考えられなかった。
「じゃあ、俺の身体は……おかしい、の?」
俺はΩとして何か欠落しているのだろうか。もしかしたら何か悪い病気なのかもしれない。どうしようと思う反面、このまま世界から消えるのも有りかもしれない、と思った。
「おかしいと言うか……」
困った様に叔父さんが父さんに視線を送った。
「その痕な、αに咬まれた痕に限りなく近いんだ」
「え……?」
父さんは一度目を伏せて小さく息を吐くと、改めて俺に顔を向けた。
「お前の血液からもその状態からも、慎二君と番の様な関係になっている可能性が高い」
「え……?慎二はβだよ……?」
父さんは一体何を言っているのだろう。
「うん。それは知ってる。だけどお前の匂いは初めてのヒートが来た後から番持ちの匂いに近くなっているんだ」
「番持ち……?」
「お前が他のαを求めないのは、もう番がいて、番にしか反応しないΩと同じ状態なんだ」
番……?番持ち?
何の冗談だろう。理解出来ない話が次々と出てくる。からかわれているのだろうか。
しかし父さんはいたって真面目に俺を見ていた。
「だけどお前の相手はβの慎二君で、そうなってしまう事は有り得ないはずなんだ。だから悟と、お前の身体に何があるのかずっと調べていたんだが……」
「βの慎二にそんな……αみたいな事、出来るの?」
「普通は出来ない。慎二君は普通のβだから」
何を言われているのか全然理解出来ない。
『番の様な関係』って何?『番持ち』って何?
それは慎二に何か迷惑を掛けてしまうんじゃ……?番になるという事はお互いを縛り付けるという事なんじゃないのか?
確かに俺はそう願った。でもそれは慎二に迷惑を掛けたかった訳じゃない。俺の中だけで完結していると思っていたから。俺が一人で勝手に夢をみていただけだったから。
「父さん……その『番の様な関係』っていうのは、俺がいるから慎二は……誰とも幸せになれない、って事?」
父さんは困ったように首を捻る。慎二はβなんだからそんなおかしな事になる訳ないはずだ。慎二にだけは迷惑をかけたくない。慎二の事を苦しめたくはないんだ。
「そこがまだなんとも……その辺がよくわからなくてな。お前のデータだけでは何とも言えないんだ。慎二君には何も影響がないかもしれない」
「それなら……」
「逆に慎二君も多大に影響を受けている可能性があるんだよ」
頭が真っ白になった。
俺のせいで慎二の人生を捻じ曲げてしまったかもしれないって事?俺があの時無理に願ったせいで。
慎二には幸せになって欲しいのに。苦しんで欲しくないのに。俺の我が儘で俺に縛り付けられているかもしれないなんて……。
気が付けば身体は芯から冷えて、ガタガタと震えだした。
「どうしよう……どうしよう、俺のせいで……慎二がっ……」
「まだ何もわからないんだよ、啓」
父さんは俺の横に来てぎゅっと俺を抱き締めた。
「明日な、慎太郎の所に行ってみようと思ってる」
「……父さん?」
慎太郎さんは慎二のお父さんだ。父さんとは学生の頃からずっとバース性なんて関係なく仲が良かったと聞いている。そんな二人が家族ぐるみでずっといい関係を築いていたのを壊してしまったのは俺だ。
慎太郎さんがどれだけ優しい人でも、父さんとの友人関係を壊してしまった俺は、きっと許してはもらえない。
「慎太郎と話をして、慎二君の検査をさせてもらおうと思うんだ」
「でも、父さん……俺のせいで慎太郎さんと疎遠になったんじゃ……」
慎太郎さんの所に行ったらきっと父さんは何か言われてしまう。俺のせいで二人の関わりも無くなってしまったのに。
「大丈夫、俺と慎太郎はそんな簡単には切れないよ。お前が気に病む事はないんだ」
「でも、俺……慎二にも慎太郎さんにも春海さんにも、あの町を逃げた事……ちゃんと、話して…ない……」
父さんは話している間中、あやす様に俺の背中をずっととんとんと優しくたたいてくれていた。
身体の震えは小さくはなっているが、まだ治まらない。
「お前には言ってないけど、慎太郎には俺からちゃんと話はしているよ」
「えっ……?」
「慎太郎は啓が言わない限り慎二君には話さないと言ってたよ」
「……そうだったんだ」
「だからな、お前は何も気にしないでいいんだよ」
言いながら父さんは俺に微笑んでくれる。自分が周りの人達に迷惑を掛けている事はわかってる。だから余計にその優しさが辛かった。
「兄さん、啓。お茶淹れたから少し落ち着こう?」
いつの間にか叔父さんが、お茶を淹れて来てくれた。
「そうだな。ほら啓、少しでいいから飲みなさい」
「……うん」
程よく飲みやすい温度になっていたそのお茶を口にいれて、ほぅと息をもらす。そのお陰か、先程までの震えが止まった。
「ありがとう悟叔父さん」
「気にすんな。……落ち着いたか?」
「うん。平気……だよ……」
「そうか、そのお茶は朝までぐっすり眠れるからな」
「ゆっくり寝なさい、啓」
「ん……」
俺はすぐに二人の会話が聞こえなくなり、暗い闇の中に身体ごと沈んでいった。
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