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何度目かの黒の夜が明けて、灰色の朝がきた。
軒下でまるまってたオレは、あまりの寒さにガタガタと震えていた。とにかく、少しでも暖かいところへ行きたくて上体を起こしたが、頭がクラクラした。
寒い。寒くて死にそうだ。いや、空腹で死にそうなのか? どっちにせよ、このままだと今日のうちに本当の異世界に行ってしまいそうだ。
重い体を引き摺るようにしてどうにか軒下から這い出すと、朽ちかけた木の階段の一段目に寝そべった。
ふうっと息をつき、それから思わず笑ってしまった。
もうどうなったっていい、いっそ死んでしまえ、なんて思ってたのに、寒いだの腹が減っただの、どれだけ生に執着してやがるんだ、オレは。
……何がいけなかったんだろう。彼らを怒らせるような事をしたか? 言われた事はきちんと守ってたし、なにも身に覚えがないんだが。
無意識に悪い事をしてしまったんだろうか。それとも、オレが年齢をとったから……?
若い頃は、今にして思えば、ずいぶんとちやほやされたものだ。カッコいいとか、イケメンとか、美人て言ったヤツもいたな。オレ男なのに。
そう言われなくなったのはおろか、相手にすらされなくなったのはいつ頃からだっけ。もう、彼らの声も思い出せない。
そう、だから、
もう、いいんだよ。オレはもう、誰からも必要とされない存在なんだよ。
***
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