光り輝く

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***  つんつん、と微かな刺激をほっぺたに受けて、ぼんやりと目を開けた。いつの間にか眠っていたらしい。灰色の空から、細かな雨が降り注いでいた。  目の前に、灰色の男の顔があった。男と言っても、せいぜい二十歳とか、そのくらいだ。オレの目線と同じ高さになるようしゃがみこんで、でかい目でじーっとオレを覗き込んでいる。オレは頭を持ち上げる気力すらなくて、寝そべったまま男を見つめ返した。  男の灰色の雨傘に、ぽつぽつと雨粒が跳ねる。男はただただオレを見つめる。  なんだっていうんだ。むしゃくしゃしたからオレに八つ当たりしようってのか? よくニュースで耳にするよな──“誰でもよかった”  ああ、なら、アンタが選んだ相手は正解だよ。これから生きてく気力もないし、積極的に死ぬ気力もない。ただ、あんまり長くは楽しませてやれそうもないけどな。もう、目を開けてるだけで精一杯だ。  男の右手がにゅっと伸びてきて、手首を掴まれた。結構な力だ。オレは痛みに顔を顰めた。  痛いって感覚が、まだ残ってんのか。厄介だな。まあでも、殴ったり蹴ったりしてる相手が無反応じゃ、面白くねぇか。ヌイグルミ殴ってんのと同じだもんな。  相手が苦痛に顔を歪めるのが見たいから、生き物相手に殴るんだろ? 自分が受けた苦痛とか屈辱を与えて、おまえは自分よりも惨めな存在なんだって、優越感と自己満足に浸りたいから。そういうテメエのほうが、よっぽど惨めなのに。憐れだよなあ。それに気付かないなんて。
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