光り輝く

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 6階で降りて、同じ形のドアを3つ通りすぎた。4つ目のドアの前で立ち止まり、ガチャガチャと耳障りな音をたてながら鍵を開けると、灰色の無機質なドアが開かれた。  狭い玄関に男物の靴が一足。廊下の片側に小さなキッチン。バスルーム。突き当たりが居室だった。  ベッドとテレビと小さなテーブルが置いてあるだけの、殺風景な部屋だ。もちろん、物はすべて灰色。カーテンも絨毯も。  ……いや待て、オレここで殴られんのか? 汚れちまうぞ。証拠隠滅に手間がかかるぞ。灰色の絨毯に真っ赤な血がついたら、そう簡単に落ちねぇぞ……ああ、この世界なら、血も灰色なのかな。  そんなことをぼんやり考えていたら、男の両手がオレの肩にかかり、すごい力で下に押された。抵抗する暇もなく、オレはぺたんと座り込んだ。  呆然とするオレを置いて、男は作り付けのクローゼットを開けた。武器でも入ってんのか?  ……なんだか、急に怖くなってしまった。  痛いのかな。  苦しいのかな。  ああ、なんて寒いんだろう。
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