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ぽふっという優しい衝撃とともに、視界が白に染まった。反射的に目をぎゅっとつむった。
なんだろう、死体を入れるための袋でも被せられたんだろうか。
恐る恐る目を開けようとしたら、強い力でがしがしと頭をこすられた。
「あーもう、ずぶ濡れじゃん」
……うん?
「なんでおとなしく軒下にいないかなあ。雨ざらしのとこでわざわざ寝てるヤツがあるかよ」
頭を揺すぶられながら、ちょっとだけ目を開いた。
真っ白なタオルの隙間から、男が口を尖らせながらオレの頭を拭いてるのが見えた。
「冬だったら、おまえもう死んでるぜ? あんなとこで、どうするつもりだったんだよ」
男の手がふと緩み、そっとオレから離れた。
「もう、1週間だぞ……」
男の声音から怒りが消えている。かわりに、呆れたような、悲しげな感情が混ざったように感じた。
なんだこれは。オレ、殺されないのか?
「1週間、同じところで律儀に待ってたってなあ──」
不意に男の目がオレを捉えた。
怒ってるようにも、泣いてるようにも見えた。
「誰も、迎えにきてくれねぇじゃんか……」
ふわりと、男の腕がオレを包んだ。
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