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Chap.1 事の始まりは転勤。
親父の転勤が決まったのは、春休みに入る直前だった。
姉は新しい高校が決まっていたし、ある意味丁度いいという流れになった。
だったら、俺も姉と一緒に住むと言った。それ言った途端、親父大好きの母親が嬉しそうにした。それが何か知らんけれど、癪に障った。
俺は別に姉が大好きとかで、一緒がいいって言ったんじゃない。
嫌いじゃあないけれど、あんまり得意じゃないくらい。
そんな姉との同居を希望した理由は、住む場所が従兄の家だったからだ。
従兄は俺の命の恩人だ。
三年前、一緒に遊んだ時に、秘密基地で火事に巻き込まれた災厄がある。
どっちも子供で、お互い何も出来なかったけれど。消防車が来るまで、必死に俺を励まし続けてくれた姿を見て、俺は一生ついていくと決めたんだ。
四月までには、従兄の家への引っ越しが終わった。
芸能人である姉は時間が合わなかったけれど、叔母と従兄の三人で引っ越し祝いのパーティをしてくれた。
従兄の家は三年前に、親父さんが亡くなっていた。自分の立場でいう叔父だ。だから余った部屋を、俺と姉で丁度良く当てがって貰えたのだ。
叔母も二人が来てくれて嬉しい、と言ってくれた。
本当は俺を恨んでいるんじゃないか、って思っていた。
三年前の火事で、俺と従兄を助ける為に、叔父は命を落としているんだ。
後で従兄に相談したら、あり得ないと笑顔で怒られた。まるで俺の気持ちなんて見抜いていたかのように、優しい言葉を掛けてくれたんだ。
従兄の名前は押立鉄。
鉄はクロガネって読むんだけれど、彼の名前はクロと読む。
従兄の母親が間違えて、出生届にガネを書き損じた結果らしい。
けれどクロが無えより、黒単体の方がカッコいいんじゃんか。って感じで、本人はむしろ気に入っているみたい。
青い空は普通だけれど、黒い空は宇宙だ。
宇宙は無限、三六五日いつでも胸騒ぎが起こってもおかしくない。
名前が宇宙(ソラ)の俺からすると、クロと居ると何でも出来そうな気がしたんだ。
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