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引っかかるような注文に、様子がおかしい…そうレイルは思った。
「そんなに飲んで大丈夫ですか?」
「あ……、あぁ。酒は強い方だ。それに、金ならちゃんとある」
「……確かに代金の方も気にはなりますけど……。――もし、よろしければ私のオリジナルのカクテルを提供したいのですが、いかがでしょうか?」
「……値段は?」
「他とさほど変わりません」
少々間を置いて男は了承した。その返答に柔らかくレイルは微笑んだ。紅い瞳が揺らめく液体の様に凪いだ。
フード下の表情は見えない。
グラスに氷が当たる甲高い綺麗な音が響いた。
「お待たせしました、創作カクテル。 サングエ・ディ・ベルヅェブです」
差し出されたグラスに男は反応を示す。
コリンズグラスに不気味に佇む赤いカクテル。先程までのどのカクテルよりも深く重い赤に喉が鳴っているようだ。
グラス底にはザクロが沈み、氷が重石をしているような赤いカクテル。ライムが上の方を漂っている。
お通しのように小さな皿にチョコレートのかけらが一緒に添えられている。
男が一口カクテルを口にする。すると凄い剣幕でこちらを睨みつけてきた。それには微かに口角を上げた。
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