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再びカウンターに戻る。彼女は小首をかしげた様子でぼぅっとカウンターの後ろ、ボトルが並べられている方を見つめていた。その顔がやはりこの店には合わないようなそんな雰囲気で、もしかしたら未成年なのではと思ってしまう。それを確認しようと口を開きかけた時だった。
「……サンドリヨン、ください」
息がつまるのを感じた。すぐに微笑んで注文を受ける。
シェイカーに氷、レモンジュース、パインジュース、オレンジジュースを60ml入れシェイクする。カラカラと氷が銀色の器に体を打ち付ける小刻みの良い音が響く。ナイフでオレンジをくし形に切り、レモンをスライスしメロンに細かく切り込みを入れ花を作る。それらを背の高いゴブレットに飾りシェイカーから静かに注ぎ入れた。オレンジ色に呑みこまれたサンドリヨンをカウンターの彼女に出す。
「お待たせしました。サンドリヨンになります」
アルコールが一切入っていないノンアルコールカクテル。何もここに来るモノは酒目当てとは限らない。それでも彼女が気掛かりではあった。仮にアルコールを頼まないにしても、未成年であるなら店に来ること自体が少々問題になるのだ。
彼女はそれをゆっくりと飲みほしていく。飾りのフルーツをつまむ。
それらを全て納めると、有難うと小さく言って、二千円をカウンターに置いて出て行ってしまう。
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