第三章 復讐商売

1/1
前へ
/5ページ
次へ

第三章 復讐商売

第三章 復讐商売  昼夜問わずかなりの時間が、過ぎてようやく車が止まった。立永は、覚悟をしていた。 「着きました。忠告ですが、はい以外の返事は死を意味しますのでお気をつけて。」 車のドアが開き、外の冷気が立永の鼻を貫く。 明るく広いコンテナの様な部屋に小さな木製の椅子が置いてあった。車のエンジン音が鳴り響くと車のいる地面が動き、車は姿を消してしまった。木製の椅子に何となくかけると知らない間に近くにあの男が、立っていた。 「大変だった様だね。君の噂は予々聞いているよ。ところでだ。あの金持ちに復讐してみたいと思わないか。」立永は、はい以外は死を意味するという忠告を素直に聞き入れた。 「首を縦に振ったという事は、復讐するという事だな。よしならば。」男の指が鳴る。すると地面が動き大きなラボに変化した。 「ここにヒョウセイマイクロブが三個体存在する。このヒョウセイマイクロブを使って私に忠実な新しい人類を作ってほしい。」立永は、それが無理だという事を伝えずに引き受けてしまった。しかし仲間がいた。一人は有名大学の講師を三年前にしていたが、村松と口論になり失業してしまった。佐藤拓。エリートだったが、就職先のアンドリューにこき使われ、うつ病になったが、同期の親友の援助やあの男の影響で、アンドリューへの復讐を胸にもう一度立ち上がった。島崎武。この二人が立永を支えるのだった。  そしてこの集結から三年後に、立永と佐藤そして島崎は惜しくもヒョウセイマイクロブを全て死滅させてしまった。そのため研究が今のままでは、無駄であることを悟った。またあの男にはヒョウセイマイクロブが生きている程で話をしていた。しかしそんな時だった。立永たちの耳に、新種の人類を作ろうとしている団体があるとの報告があった。それに対し遅いと怒り狂ったあの男により研究を急かされてしまう。しかしヒョウセイマイクロブはもう存在していない。その為、ヒョウセイマイクロブを無謀にもあの男に内緒で、盗みに行くことにした。しかし大失敗に終わる。その時に島崎が、この新種の開発の技術を、応用をして生物兵器として戦争に使用される予定だということを知った。だが、人間をベースに作ると戦争に使う事が出来ない。何故なら欲や反逆心そして妬みを人はもつからである。しかしこの事を考えた島崎は、盗みに行く際にあの遺伝子を密かに破壊するつもりだった。 何故なら生まれてくる新種が、人類を滅ぼしかねないと考えていたからである。しかし破壊するには様々な難関を突破しなければならない。この点において島崎は、賢かった。 あの男の情報を、デイビットに流すかわりに身近に置いてもらいあの男から身を守るのと同時に破壊のチャンスを、狙っていた。また立永と佐藤には、ヒョウセイマイクロブを盗む名目で裏切っていた為、二人は信じてしまっていた。また着々とデイビットや村松そして因縁のあったアンドリューの信頼を勝ち得て ついに研究に携わる事ができた。そして計画の最終段階に来たが、島崎は、ギリギリで破壊する事ができなかった。あの男の刺客により皮肉にも死亡してしまう。しかし島崎のうつ病時代を支えた親友が、破壊しなければ人類の時代が終わると説得され島崎の計画を秘密裏に引き継いでくれた。だが、誰にもバレずに破壊する方法を教える前に島崎が亡くなった為、計画が停止してしまう。そんな時だった。培養された中で最も優秀なヒョウセイマイクロブ通称マザーが遺伝子の吸収を始め完成まで後、四日間だと判明したのだった。遺伝子の吸収を止めても無駄だ。かといって止めなければ島崎の理論に、基づくと人類は滅亡してしまう可能性が高い。そして親友はヒョウセイマイクロブが七種類まで遺伝子を取り込み遺伝子のいいとこ取りをするという性質を利用した。その手段は説明するのは、簡単だ。まず培養されたヒョウセイマイクロブを入手する。そのヒョウセイマイクロブに松村の遺伝子情報と命令を聴きやすい犬の遺伝子を取り込ませ新たな合成遺伝子を作らせる。この遺伝子合成の速度は、2種類の場合合成速度の上昇を高める効果のある薬品を使用して一時間なのでマザーの遺伝子合成に間に合う。そして出来上がった合成遺伝子を摘出する。そしてその遺伝子を、マザーに取り込ませる。こうする事で7種類の遺伝子に収めつつ人類へ復讐する事を防げるのでは、と考えたのだ。しかし問題があった。研究所には犬の遺伝子を保存していない。またこの忙しい期間に外出することは出来ない。そこで犬を飼育している人を探した。すると松村が、ウルフドックを飼育している事を、突き止めた。 そして松村に近づき衣服についている毛を探した。幸い松村は白髪ではない為すぐに入手する事ができた。こうして準備を整えた島崎の親友は島崎の計画を遂に成し遂げたのだった。しかし全てが順調にいった計画を嘲笑う事件が起こった。  二千九十一年六月三十一日午前十一時。一人の男が産声をあげた。その男の容姿はそう明らかに狼だった。彼の産毛は狼のものに近かったが頭皮の毛だけは人にも近かった。何故こうなったのかは後に判明するのだが、まず松村の飼い犬が犬ではなく本物の狼だったという事。さらに驚愕なのは、狼の遺伝子が人間の遺伝子よりも濃く出てしまったという事だ。何故こうなったのだろうか。島崎の親友は、一つの結論に至る。ヒョウセイマイクロブ自身に実は、意志があるという事だ。実際このぶっ飛んだ理論が肯定される事例があった。一つ目はこの微生物は何故か群を作り個体同士が、何の能力もない様々な形の酵素をくっついた時に生成し受け渡し合うのだ。これはコミュニケーションを取っている可能性があると立永も過去に、指摘している。また群の中に八種類以上の遺伝子を取り込んでしまった個体がいた場合。複数のヒョウセイマイクロブが集まりその遺伝子を、分散して助けるという例もあったのだ。しかし謎なのはマザーが、どうして人よりも狼の外見を選んだのだろうか。それに関しての説明を考える前に怒り狂った松村と困惑するアンドリューが、デイビットを問いただした。しかしデイビットは理由がわからず研究者達に責任を擦りつけた。無論の通り島崎の親友も尋問された。しかし理由は運良く判明せずこの狼男の処置問題に擦りかわったのだった。最初は殺処分の予定だったが、摘出する為に死亡したマザーの代わりは、中々産まれない事が判明した。また政府からの圧力もあり殺処分は中止となった。またこの狼男は、悲劇という事でトラジックと名が付いた。さらに生まれるまでの実験も全てトラジック事件と統合され呼ばれる事になる。またトラジック自体は兵器としての厳しい訓練そして国家への忠誠心を、育てられた。しかし知能の高さゆえに教育らしい教育は教えられず、文字の読み書きは出来ないが、世界共通言語のほんの一部のみ喋れるように調整が施された。また何もない独房と訓練場以外は行けない生活が、十年続いた。しかし一七歳を迎えた年に、紛争が国家同士の戦争に変化した。その為、強力な生物兵器であるトラジックが戦地に駆り出されたのである。そして六年間戦地で人を殺し続け戦争が、集結した。しかし二ヶ月という短さで、新たな戦争が勃発。 しかしこの戦争は、まだ新しい国家にて島国の首都であるダックスタウンとトラジックの所属する国であるコロンビアナが戦った。しかし民族が多かったダックスタウンは、民族間の抗争もあった為、簡単に落とせるとコロンビア側に考えられていた。その為、戦力を落として分散した攻撃を仕掛けた。しかしあの男の統率により民族間の抗争は、既に集結しておりコロンビアナの分散してしまった小規模な戦力では、長期戦を強いられた。そんな知らせを聞いたコロンビアナの政府は密かに、動いていた市長暗殺計画により、あの男ハリス・ペクレを、暗殺する為に三人の戦闘員とトラジックが、ダックスタウンの沖に放った。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加