2人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「……」
ついつい持って帰って来てしまったけど、どうしたものか。
でもひとつだけ確かなことは、私の前に何度も現れるこの傘は、やっぱり私のものだと言うことだ。
「……ねぇ、あなたはどうして私の前に現れるの?」
「……」
「私になにか伝えたいことがあるの?」
「……」
答えてくれる声なんかない。
傘と会話している姿は、周りから見たらきっと異様な光景だろう。部屋に誰もいなくて良かった。
……傘を見ていると、買ってもらった日のことを思い出す。
そう言えば、あまりにも嬉しくて名前つけたこともあったっけな。えっと……なんてつけたんだっけ?
「……っ!?」
思い出に浸りながらぼーっしていると、一瞬傘のまわりになにかドス黒いもやみたいなのが見えた気がした。
慌てて目をこすると、なにごともなかったかのようにそれは跡形もなく消えていた。でも、黒くて禍々しいものは確かにあったと思う。
“ 恨まれてるんじゃないの? “
早苗の言葉が頭の中でリピートされる。
……どうしよう。私、本気で傘に呪い殺されるかも。
最初のコメントを投稿しよう!