Lesson Ⅴ 淡いキス

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あれから、チェックアウトの時間が迫られていた為、余計な話はせずに帰路に着いた。 何を話したらいいか分からなくなっていた俺には正直好都合で、口数が少なくなってもハンドルを握ってしまえば違和感はない。 しかし、 運転を始めてからずっとお互い無言てのも気まずい。 「……あのさ、」 「なんですか?」 耐えきれずにとりあえず切り出したけど、次に続く言葉がない。 「……えっと、」 「無理しなくていいですよ。僕は大丈夫です。」 そんな俺とは対照的な星川が淡々と話を切り返してくる。 大丈夫? 何が? 「先生て意外と優しいですよね。」 「……あ、え……意外って……なんだよ。」 「いえ。意外て言うか……優しいですよ。」 声のトーンを少しあげながら優しげにそう口にする星川は、穏やかで…… 何が大丈夫だよ。 逆に大丈夫じゃない気がして言葉に詰まる。 「そういうとこ……好きでした……」 「え……」 「あ、また雨降ってきましたね。でももうすぐ着くから……あ、でも外出る時濡れちゃいますね。」 「あ……あぁ、そうだな。」 ……でした、 ────か。 まさかこんな言葉を聞くなんて。
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