Lesson Ⅱ 苦い過去

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つか、さっき……あいつなんでチラッて俺のこと見たんだろ。 雨音しかしない室内。ぼんやり窓の外を見ていたら、ふとそんな些細なことを思い出した。 だから何ってこともないが、時々俺を見る目がやたら熱を帯びているように感じる時がある。 そりゃ、俺を好きだと断言してるくらいだからなんとなく納得だけど。 でも、 なんなんだ………この感覚。 腹の底から沸き上がるような熱い何か。 近頃、そんな原因不明な感覚を何度か味わっている。 だけどいつも気持ちを素通りしてちゃんと考えたことはない。 今日だって……こうして中途半端に考えてるだけで、本気で考える気はないし。 だから今日も、少しだけモヤモヤする頭を振り払うかのように短くなった煙草を携帯用の灰皿へ揉み消し、頭ん中を無理矢理切り替えた。 さてと、そろそろ…帰るか。 煙草を二本吸い終わって窓の外を見ても一向に止む気配がない雨。 むしろ、雨はどんどんと激しさを増している。 いつまでもここに居たってこの雨が止むわけでもないし、濡れるのを覚悟で帰ろうと戸締まりをして部屋の電気を消し鍵をかけるためポケットに手を突っ込んだ。 あれ?………鍵がない。 鍵………どっかで落とした? でも確かにズボンのポケット入れてチャリンチャリンしてた感触は覚えてる。 じゃあ、いつからチャリンチャリンしなくなった?
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