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…………あ、もしかして。
さっきトイレに行って、落とさないようにってポケットから鍵だけ出して……そのまま置いてきちまったのかも。
ったく……めんどくせーな。
とりあえず荷物を室内に残し、雨音だけが響く廊下を重い足取りで歩き出した。
*
「あーやっぱり…あった。」
案の定、鍵はしっかりトイレに置き去りにされてて、今度こそしっかりと手にしてもと来た廊下を戻ろうとした。
すると、雨音に混じって廊下に響く俺じゃない足音に足を止める。
こんな時間にまだ誰かいるのか?
コツコツと響く足音がゆっくりとこっちに近付いくる。だけど、その姿は薄暗い蛍光灯のせいでぼんやりとしか写し出されていない。
生徒………か?
足音が次第に大きくなり視界にそいつを捉えられるくらいになる頃、向こうも俺に気付いて一瞬足を止めた。
「…………なんで……」
そう…つい漏らしてしまったのは、まさかこんなとこに居るはずのないあいつが居たから。
なんで………
なんで……居るんだ
窓に叩きつけるほど強く降る雨の音が一瞬遠退いた気がした。
そのまま次に聞こえてきたのは、コツコツとさっきより早く近付く足音……
────そして、間違えるはずがないその声が雨音と混ざって俺の耳に響いてきた……
「………先…生…」
「おまえ………なん、で……」
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