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「…………あの時は、ごめんなさい。俺っ、」
「別に……。つか、謝るほどのことじゃねーし。」
別れを告げられたあの日以来、洵也に対して何も期待しなくなったし、必死に忘れて全てを振り出しに戻し、それでやっと俺はこいつとの関係にケリをつけたっつーのに。
なのに、目の前で再会した元恋人の一言に予想外の胸の痛みを感じてしまった。
「俺、もう帰るから。」
ここにこれ以上居ない方がいい。
本能が危険信号を出しているような気がして、その胸の痛みが増す前に俺は全てを振り払うかのように背を向けた。
「先生っ!ちょっと待って。あの……違くて、俺は…ずっと────」
雨の音が言葉尻を掻き消していく。
だけど、俺にはそんなのどうだっていい。
突き刺さる視線を背中に感じていたけど、俺はそれを振り払うように小さく…“じゃあな”と背を向けたまま告げ足早にその場を後にした。
*
気付いたら生徒会室の前まで戻ってきていて、ここまでどうやって戻ってきたか記憶がないことに自分で正直驚いた。
………たくっ。
そしてドアに手を掛けようとしたら………
あれ?明るい。
電気は消してきたはずなのに……
とりあえずドアを開け中に入ると、
「………先生、どこ行ってたんですか?」
星川が心配そうに俺を出迎えた。
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