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「おまっ……あいつらと帰ったんじゃなかったのかよ?」
「いいえ、途中で別れました…先生が気になって。傘……持ってきてないんじゃないですか?」
「傘?」
「雨、すごい降ってますよ。」
窓の外へと視線を移すと、窓に叩きつけるほどの雨はさっきより更に強さを増したように思えた。
「あぁ……すげー降ってるな。」
そのままぼんやり外を眺めている俺の後ろに星川が同じように外を眺めている姿がガラス越しに見えて、次の瞬間…雨粒に混ざるように写る星川と目が合った。
「先生………」
その目をそらすことも出来ずに佇んでいると、影が近付きすぐに背中に温もりを感じた。
「ちょっ……こんなとこで、誰か来たらっ」
「もうこんな時間に誰も居ませんよ。」
誰も………か。
「それに……」
「なんだよ。」
背中から俺を抱きしめる腕はいつものように優しい。
だけど、こうして何気ない優しさを感じる度に俺の心はまた迷子になっていく……
「なんだか……先生、」
「だからなんだよ。」
「…………さっきここに戻ってきた時、泣きそうな顔してたから……だから、、」
なんでこの俺が泣きそうとか…
「何言ってんだよ。別にいつも通りだし、早く帰ろうぜ?」
別にいつも通りだと腰に回された腕をほどこうとしたら“もう少し”と断られた。
星川のその腕は包み込むように強く俺を抱きしめ続け、なんだか妙にこいつの腕の中が落ち着く気がしてしまうのは気のせいなのか……
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