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いや、……気のせいだろ。俺はそこまで弱くはない。
そんなマイナスな思考を振り払うように小さく息を吐き出す。
「先生?」
「今度はなんだよ。」
「先生のマンション……行きたい。」
「はぁ?昨日も来たし、明日だって…がっ…んんッ…」
明日も学校…と、言う前に俺の言葉を飲み込むかのように星川が後ろから覗き込み、荒々しくその口を塞いだ。
「……んんッ…おっ…い…」
薄く開いた唇の隙間から熱い舌が入り込み、俺の舌を絡め取っていく。
口端から唾液が流れるのも構わずにその舌は俺の咥内を動き回り、その激しいキスに翻弄されそうになる一歩手前で、唇が離れていった。
「……ッ……なにっ…いきなり」
「続きは帰ってから。だから、一緒にマンション帰りましょう?」
「だからっ、」
仮にも教師として理性を常に働かせていないとまた同じことを繰り返してしまう。
だから、一歩退いてこいつとは付き合っていこうと決めたはずなのに、
「先生……お願い。雨が小降りになったら帰りますから…だから、いいでしょ?」
押しに弱いのだけは相変わらず直らない。
だから、結局今日も断りきれずに小さく頷き流されてしまう。
「先生、我が儘言ってごめんなさい。」
「じゃあやめるか?」
「嫌です。」
「…………帰るぞ」
……たくっ、俺は何してんだ。
自分の情けなさを痛感しながら、星川に気付かれないようため息を吐いて、戸締まりをした終えた生徒会室をさっさと後にした。
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