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この重い空気に耐えきれなくなった俺は、近くの窓を開け白衣のポケットから煙草を取出すと、
「先生、学校は禁煙です閉まってください」
また睨まれた。
「えー別にいいじゃん」
「教師のくせにいいわけなんじゃないですか。それに僕は真面目くんじゃない、星川大地です」
「おまえの名前くらい知ってるよ。ただ、大地って名前は今知ったけどな」
担任でもなければ、担当科目でもない。
ただ前に一度だけこいつのクラスの担任が急病で休んだ時、代理で1日見ただけなのに、俺はこいつの名前と顔を覚えていた。
名前は今知ったなんて口から出任せを言ったのは、あの時のことなんて覚えてないだろうし、俺のことなんてそこまで覚えてないと思ったから、でも…こいつは、
「うちのクラス1日だけ見た日、先生は僕の名前を名簿と確認しながら呼んでましたよ。大地って名前、珍しいなって言ってました。忘れたんですか?」
ちゃんと覚えてた自分を知られない様、忘れたふりしたのに…やっぱりこいつは全部覚えてやがった。
「あーごめん忘れてた。そんなこと俺言ってたんだ…。でも星川って名前は覚えてたんだからいいだろ?これからは星川って呼ぶからあんまり恐い顔で睨むなよ、カッコいい顔が台無しだぜ?」
「………ほっといてください。僕は呼び名なんてどうでもいい。ただ、先生にもっと僕のことを意識して欲しいだけなんです。じゃないと………────」
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