京言葉の彼

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京言葉の彼

京都のお茶屋さんの息子さんらしいボンボン(お坊っちゃん)。 そのせいか、彼は聞きなれない特有の京都弁を話す。 普通の京都弁とも違う、いわゆる京言葉と呼ばれるものらしい。 「舞妓言葉の男はんバージョンや」と、彼は笑った。 話しかければ「へぇ。」 相づちは、「そうどすな。」 呼びかける時は「あんさん。◯◯はん。」 自分の事は「わて。」 感謝を伝えるのは「おおきに。」 謝る時は「すんまへん。堪忍な。」 そんな彼、秋芳(あきよし)さん。 私よりも一回りも年上なのに、私を子供扱いせずレディとして丁重に扱ってくれる。 そんなトコもやっぱり、お茶屋さんで育ったせいなのかな? そしてベッドの上の彼は、とっても優しくて意地悪だ。 「愛柚(あゆ)はん、どないしはった? そないに隅っこにおらんとこっちに来い(きい)。」 私は、いつも秋芳さんとベッドにいると、自分の子供っぽい所作や身体付きが気になって、秋芳さんに素直にくっ付けなくて、広いベッドの端っこに小さくなっている。 そんな私を、優しく秋芳さんが引き寄せる。 「なんや愛柚はんは、いっつもそうどすな? なんで、いつも隅っこに行かはるん? そないに、わてと同じベッドで寝るんは嫌どすか?」 「い、いえ、そんな…嫌だなんて…、そんな事ありません…。」 「そうどすか? それに、いつまで経っても、その敬語話すのんも直りまへんな?」 「あ…、だって秋芳さん、年上ですし…」 「わてと愛柚はんは、もう恋人同士なんやさかい、そない他人行儀な言葉遣いされるんは、ちぃと寂しおすな…」 「そんな…他人行儀だなんて…そんな事は…」 「そうどすか? ほなら、もっと側におっておくれやす。わては愛柚はんと、いつももっと近おに(ちこおに)おりたいんどす…」 そう言って秋芳さんは、私をギュッと抱き締めると狂おしい程の濃厚なキスで私を襲った。 「いつになったら愛柚はんは、わてに敬語を使わへんように、ならはるんやろうな。もっともっと恋人らしゅうしたらええんやろか?」
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