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秋芳さんの決意
「愛柚はん。今日はちいとゆっくりお話ししまひょか」
その穏やかだけれどハッキリとした声色に、私はドキリとする。
いつもの秋芳さんの低くて優しい声だけど、どこかしら緊張感がある。
「…はい、、、」
なんだろう、胸の奥がザワザワする。
秋芳さんのお部屋の広いソファに座った秋芳さんが、ニッコリと微笑んで両足を広げた間をポンポンと叩いた。
私は、そっとその場所に滑り込んだ。
バックハグしながら秋芳さんが私の耳元で囁いた。
「愛柚はん、進路の事やけんど…」
きた!! やっぱりこの話しだったんだ。
ドキドキしながら、次の言葉を待つ。
「わては、愛柚はんにはまだまだもっと広い世界を見て欲しいと思てます。」
「けんど、わての存在が愛柚はんの未来の邪魔になるんやったら、それはアカンとも思てます」
「そんなっ、邪魔だなんてっ…」
秋芳さんの人差し指が私の唇をそっと触れた。
「しっ、もちぃーとだけ黙って聞いてくれはりますか?」
「はぃ…」
「わての勝手な願いは、こんまま愛柚はんとずっと一生一緒におる事どす。せやけんど…」
そこで秋芳さんは、大きく一息ついた。そして…
「けんど、そのせいで、愛柚はんの将来にとっての足枷になるんやったら」
そこで、秋芳さんが私をギュッと抱きしめた。
「わては、愛柚はんから離れんとあきまへん」
その言葉に私の身体がビクッと跳ねた。
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