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その言葉に私はもう、涙が止まらなかった。
「あ…、秋芳…さ、ごめ、ごめ…なさ…」
「謝ることやあらへん。堪忍な。愛柚はんには、酷な話しやったな。せやけど。わては、愛柚はんが何よりも大事なんどす」
「わては、いつまでも、ずっとここにおります。せやから愛柚はんは、ゆっくり自分の道を探さはったらよろし」
「わ、わか…り、まし、た…。ちゃんと、ちゃんと考えます。私のやりたい事。秋芳、さん…、あり、がと…」
「分かってくれはったんなら嬉しおす。愛柚はんは、泣いたはってもかいらし…」
秋芳さんの腕の力が少ーしだけ強くなって、私をギュッと抱きしめてくれている。
それは私には、秋芳さんに"頑張れ"って言われてるみたいに思えた。
その日は、秋芳さんの腕の中でたくさんの話しをした。
家族の話し、小さかった頃の夢、憧れの人、尊敬する先輩たち。
そして、最愛の人。
もしかしたら、秋芳さんとこんな風に話したのは初めてだったかも知れない。
いつでも秋芳さんは、大人でステキ過ぎて私はドキドキするばっかりで、思った事を口にする事もはばかられていた。
でも今日はもちろんドキドキしていたけど、それよりもとても安心していられた。
それはきっと秋芳さんの胸の音もドキドキしていたから。
ああ、大人な秋芳さんでも私と同じでこんなにドキドキする時もあるんだって分かったから。
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