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ぱつぱつと雨粒を弾く臙脂色の傘の存在が、全てが現実である事を証明してくれている。
『運命だと思ったの』
美女の言葉は青葉に落ちた雨粒のようにきらきらと光を放つ。美しさと寂しさが混じり合って、私の記憶の鬱屈を滑っていく。
価値が与えられた気がしたから?
偶然に手を伸ばして、あなたの望んだ運命を装ってみたくなってしまった。
あの人はもう、会うつもりはないだろうけれど。先に謝るならばごめんなさい。私って空気が読めない認定されている、面倒くさい女なんです。
次の雨はいつだろう。
帰り道も分からないくせに。
臙脂色に彩られた足取りはほんの少しだけ、軽い。
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