あなたは誰かの運命の人

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スヌーズ機能で設定した五分間は実は三秒なんじゃないかと思うくらいに一瞬だ。早く起きろと唸りを上げるそれを黙らせる為に私は人差し指に信号を送る。年季の入った薄手の掛け布団の下で寝返りを打つと、ちょっと心配になるくらいどこかの骨が音を立てた。 レースのカーテン越しからは薄雲を介した弱々しい日の光が差し込んでいる。 確か今日は、昼過ぎから降水確率が50%だった。エクトプラズムのように舞い戻ろうとする睡魔を掛け布団ごと剥いで、だるくて重たい体を起こす。裸足にぺとりぺとりと床が貼り付く感覚は湿度が高いせいだろう。室内干しが決定した洗濯はそれだけで気分が下がる。 『生乾き臭を撃退!』なんて文句の洗剤を端から試しても効果がない。洗濯機の問題なのだろうか。渋った所で明日太陽が顔を出す保障もないのが悩ましい。疑惑の洗濯機に衣服を放り込みながら、頭の中で今日の予定を確認する。しかしその作業は数秒で終了してしまった。
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