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「だいたい、なんで、こんな……」 「だぁって、心配じゃないか、うっふっふ。うちの大事な女中なんだし?」  冗談めかした口調で、どこまでが本気で、どこまでが野次馬根性なのか分からない。  そう。お吉は本当に、うちの大事な女中なのだ。いなくなってしまうなんて、考えられないほどに。それなのに、自分一人が蚊帳の外に置かれていたなんて。  お父っつぁんとおっ母さんだけならまだしも、よりにもよって――  お絹は、きっと清太郎を睨み付けた。 「あんたが、うちの女中(・・・・・)だなんて言うこたないのよ。まだ、祝言したわけじゃないんだし。お吉のことなんか、よく知らないくせに。おまけに、面白がってこんなとこから()き見をするだなんて、趣味が悪いったらないわ」  つんけんと言ってやったつもりが、少し鼻声になった。 「……母親の具合が悪いというのは、本当らしいんだ」  不意に、清太郎の口調が改まった。 「今以上に病が篤くなったら、住み込みの女中なんて続けられない。かと言って、女一人で、病人を抱えながら活計(たづき)など立てられない」 「亭主に養ってもらうしか無いって事?」  そうか、病の母親ごと引き取ってもいいという男が、本当にちゃんとした良い人なのかを心配してるのだなと、お絹にも得心がいった。手のひらを返すように病人をないがしろにしたり、恩着せがましく無理無体を言い出すような人であってはたまらない。  ああ本当に、どうして女はこんな風にしか生きられないんだろうと、悔しくなる。 「それに、母親の病には、江戸の空気は良くないそうだ。どこか田舎でゆっくりと静養すれば或いはと医者に言われたとかで、葛西で百姓をしている伯父に、良い人がいたら紹介して欲しいと頼んでいたらしい」
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