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「くだらない理由なら、その傘叩き割るからな」
煮え切らない態度の有加に晴也は、容赦なく言った。
せっかく買ってもらった傘を失うのが嫌だったのか、有加はすんなり白状した。
「だって、晴ちゃんの名前書いたら、相合傘みたいになるかなって思ったの」
そう言った有加に、真っ先に食い付いたのは亜子だった。
「嘘ぉ、有加、アンタそういうことだったの?! あっ……全国大会優勝が羨ましいって、もしかして天野くんのこと応援して?」
「うん。だって晴ちゃん前に全国行きたいって言ってたもん」
「キャー、有加もついにこの時が来たのね」
女二人の世界に入って、晴也の喋る隙きがまるで無い。口をあんぐりと開けていた晴也だが、どうにも黙っておけない。晴也は、隅に置けないなんて、茶化してくる亜子を落ち着かせる。
「全国って、そういう意味じゃねぇよ。アイドルの全国ツアー行きたいって話だし」
アイドルオタクの晴也は、亜子に全国ツアーの話を熱苦しく短的に語る。亜子は、あっという間に関心が無くなったのか、適当に相槌を打つ。
「そうなの? でも天野くんサッカー部でしょ?」
亜子は、有加へアイコンタクトをすると、有加もそのはずだと首を振る。
晴也は、有加の反応を一瞥すると、驚きのあまり叫ぶ。
「有加には話した事あるぞ。サッカーは、マネージャーで、俺がやってるのは落語同好会」
「渋っ」
思ってもみなかった晴也の部活セレクトに、亜子も思わず本音が出る。
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