赤いショートショート:カレンダー

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『赤いカレンダー』  2019年5月下旬。  関東大学生のヨシオとミチコは、東京郊外で同居生活を始めるにあたり、 「新しいマンションには新しいカレンダーがいいじゃん」  ヨシオが近くのホームセンターで買ってきた。  縦長の月別表示の製品で、抽象画のようなデザイン画が上半分に入っている。 「なんかスタートって感じで……いいよね」 「そう、それが大事なんだ。だから買ったのさ」  そのカレンダーを窓の傍の壁に下げると、1月分から4月分まで破り取った。  5月のデザイン画は、緑を基調にした絵だった。  2人は、一日1回はそのカレンダーを見る生活が始まった。  あっと言う間に6月になったので、5月分のカレンダーを破り取ってみると、カレンダー一面が真っ赤だった。 「へー……6月なのに……?」 「だよね……。例えばブルーとか……」  どうも気になったので、買ったホームセンターに持っていって、聞いてみると、 「それは変ですね……。商品サンプルではブルーのはずなんですが……。ミスプリントかも知れません……」  同じカレンダーの正常な分しかなかったので、仕方なく、それを貰ってきた。 「さっさと替えて。その赤……なんかイヤな赤なのよ……」  マジで嫌そうにミチコが言うので、 「了解」  カレンダーの上を持って取り去ろうとすると、6月分の赤いカレンダーだけが取れだ。 「あれ?」 「えっ、なんで?」  そして破れ飛んだ赤いカレンダーは、空中で一回転すると、ヨシオの頭に載った。  直後、丸で彼の体を飲み込むように、丸まったカレンダーが……  ストーン……と、床に落ちた。 「えっ? ヨシオ?」  丸まった状態で床に立っている赤いカレンダーを、ミチコは拾ったが、ヨシオは何処にもいなかった。 「ヨシオ……」  彼女は呆然と腰を抜かし、その場に倒れた。  すると赤いカレンダーは彼女の手から離れ、その頭に載っかった。  直後――ツルリッ……と、彼女の体も吸い込まれるように消えた。  さらに赤いカレンダーは、フワッと浮き上がると、この小説を読んでいただいている貴方の方へ――  ――終――
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