RMAラプソディ

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 日本では、宗教団体は、善意の組織と看做され、基本、無税なのだ。  信者から巻き上げられる銭が、その源泉であり、それを税金なんかで持っていかれてはたまらない。  RMA教団の施設は、その意味では宗教団体にふさわしい荘厳な意匠をしていたが、裏に回れば、それは映画のセットのような”やぐい”つくりであることは、知られていない。  そういう演出も、在京映画制作会社の中の”熱心な”信者を通じて、コネを作って実現したのである。  それを”宇宙神”が望んでいると、高鳥が一言言えば、”熱心な”信者は、寝食を忘れてコネ実現にまい進してくれるのだから、ありがたい話である。  東丈が箱根で失踪してくれなければ、今の高鳥の存在は無い。  よくて、東丈の右腕として、彼の弱小零細教団の幹部で終わっただろう。  東丈のGENKENに参加したころは、そんな殊勝な気持ちであったのは間違いない。  しかし、目の上のたんこぶである東丈が失踪した今、高鳥の進軍を妨げる存在は、この世界には存在しないように、彼に思われたのである。  彼の目の前には自由の天地だけが、あった。  東丈の失踪後、GENKENは、彼の同級生であった井沢郁江が引き継いだ。なんだか、ムウ帝国のソル王女だった記憶を取り戻した彼女は、その霊の記憶を頼りに、東丈の失踪の穴を埋めようとした。  しかし、そのことを快く思わないGENKENメンバーも多く、高鳥はそういう連中を集めてRMAの立ち上げにこぎつけたのだった。  当然ながら、GENKENを井沢郁江が簒奪した”形骸”と糾弾し、自分たちこそが”東丈の正統な”思想的”後継者”であると喧伝した。  その後、東丈の敬愛していた姉の三千子も井沢郁江に協力するようになったが、あちらと違い、その正統性を必要以上に喧伝する策を高鳥たちはとらなかった。いわゆる宗教論争を、こちらから井沢郁江たちに挑むこともしない。  東丈という、何物にも変えがたいカリスマを失った以上、多少、アイドルのようなかわいい井沢郁江であろうと、いずれ自滅していくだろうと、考えられ、それに進軍の力を取られるつもりにはなれなかったからだ。  そうして、GENKENの亜流というそしりを受けながらも、高鳥たちはRMAを旗揚げしたのである。
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